日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】天井刳り正宗

天井刳り正宗 筑前国上座郡三奈木、現在の福岡県甘木市美奈木の領主・黒田元男爵家伝来、相州正宗作刀の異名です。この黒田家は、福岡城主・黒田家の首席家老で、三奈木において一万六千二百余石を知行していました。 本刀は刃長二尺三寸(約八一・八センチ)…

【刀剣紹介】鶴丸虎徹

鶴丸虎徹 木戸孝允の蔵刀です。江戸の長曽祢虎徹の作です。安政五年(一八五八)、長州藩主・毛利敬親の名代として、薩摩藩主・島津斉彬の病気見舞に行った木戸孝允は、すでに病気の全快していた斉彬の所望により、小太刀の妙技を披露しました。その褒美として…

【刀剣紹介】弦桶丸

弦桶丸 美濃の豪族・蜂屋家の伝来の刀号です。「正次」と二字で、粟田口系とも、京の達磨系ともいいます。達磨系は京から濃州賀茂郡蜂屋庄に移住しているから、そこの家族の伝来刀ならば、達磨系の正次と見るべきです。刀号は弦桶、つまり弦のある桶を切った…

【刀剣紹介】釣り金切り

釣り金切り 蔀を釣り上げている部金を切ったことによる刀の号です。 1.大和の千手院金王の作。 奈良の興福寺の門跡所蔵です。興福寺の僧がある神社へ参籠のとき、この太刀を抜いて出たところ、蔀の釣り金に当たり、それを切って落としたといいます。 2.来国…

【刀剣紹介】綱切り貞宗

綱切り貞宗 織田信長の旧蔵刀です。出羽国檜山郡檜山(秋田県能代市)の城主・安東愛季の重臣、南部季賢が、紀州の熊野参詣を企て、路銀を得るため、大鷹三羽を連れて西下しました。まず安土城をたずね、それを織田信長に献上しました。奥州から初めての領主の…

【刀剣紹介】綱切り

綱切り 太刀の異名です。 1.『享保名物帳』焼失之部所載、筑紫正恒作の太刀です。佐々木高綱が寿永三年(一一八四)正月二十日、宇治川先陣のさい、河中に張った綱を切ったという太刀です。縄切りとも書きます。その後、桜田十郎が所持しました。明徳三年(一三…

【刀剣紹介】千引長光

千引長光 備前長光の刀の異名です。島津藩主・島津家久が慶長四年(一五九九)正月九日、泗川の戦の功により、正四位下少将に任じられたとき、徳川家康が家久に贈った刀です。もと織田信長の三男・三七郎信孝の愛刀で、中心に「三七郎」と切りつけてありました…

【刀剣紹介】血吸丸

血吸丸 刀の異名。源頼光が大江山の童子征伐のとき、「血すゐ」という二尺一寸(約六三・六センチ)の太刀を笈に入れて携行した、との伝説があります。作者については、奥州の雄安説と、瓦安説とがあります。しかし、瓦安は尾安の誤記でしょう。雄安は小安とも…

【刀剣紹介】茶臼丸

茶臼丸 1.坂崎出羽守成正家の四刀の一です。茶坊主が茶をひいているところを、出羽守がこの脇差で、茶臼もろとも真二つに斬りわったことからの命名です。出羽守は千姫を奪う計画が発覚、元和二年(一六一六)自殺しました。本刀が坂崎家旧蔵と知らず、豊前国竜…

【刀剣紹介】太郎坊兼光

太郎坊兼光 備前長船兼光の刀の異名です。 1.奥州二本松城主・丹羽家の伝来です。初め明智光秀が織田信長から拝領し、愛宕神社に奉納していたものを、豊臣秀吉が代わりの刀を納めて申し受け、愛宕山の天狗の名に因んで、太郎坊兼光と呼んでいました。一時、…

【刀剣紹介】高瀬長光

高瀬長光 上杉景勝愛蔵三十五腰の一です。 刃長二尺四二分(約七三・六センチ)、刃文は丁子乱れ、物打ちは小模様になる。銘は「長船長光 文永十一年十月廿五日」とある。古い黒鞘の打ち刀拵えがあり、鞘の鯉口に「日光」と墨書がある。 したがって『享保名物…

【刀剣紹介】宗三信国

宗三信国 三好政長入道宗三の所持の刀です。天文十八年(一五四九)、宗三敗死のあと、織田信長の手にわたり、天正八年(一五八〇)二月二十二日、天王寺屋こと津田宗及が京都において、信長をたずねたとき、本刀を拝見しました。その後の消息不明です。本能寺の…

【刀剣紹介】僧正孫六

僧正孫六 濃州関の孫六兼元作の刀の異名です。三河長篠城主の奥平信昌の家臣・鳥居強右衛門が、出羽の羽黒山に参詣したとき、同山の僧正より贈られたものです。強右衛門が長篠の戦で殺されたあと、藩主・奥平家蔵となりました。大正の末、同家の売立てで売却…

【刀剣紹介】千頭割り

千頭割り 刀の異名です。享保(一七一六)のころ、旗本・本多唐之助の家中・恵兵衛が夜道で、北国で名ある強盗・権房五左衛門に、酒手をねだられました。持ち合せがない、と断ると、大脇差で切りかかったので、抜き打ちに強盗を倒しました。しかし、自分の刀の…

【刀剣紹介】千貫国光

千貫国光 『本阿弥光悦押形』所載、来国光の在銘刀です。異名は昔、千貫の値段がついたことからの命名です。ただし、これには同名異物があります。 1.『継平押形』(昭和三年刊)に併掲されている『本阿弥光悦押形』に出ている押形では、目釘孔が四個あり、刀…

【刀剣紹介】関ヶ原陣刀

関ヶ原陣刀 肥後熊本城主・細川忠興入道三斎が、慶長五年(一六〇〇)の関ヶ原合戦に佩いた半太刀拵えの大小です。 大は備前の長船春光、刃長二尺二寸(約六六・七センチ)、小は無銘で、平安城則光の鑑定、刃長一尺六寸九分五厘(約五一・四センチ)、大の柄は頭…

【刀剣紹介】青竜月影正宗

青竜月影正宗 宝暦十二年(一七六二)極月三日付け、代金五百枚の無銘極め、相州正宗の刀です。 刃長二尺二寸六分(約六八・五センチ)、表裏に樋をかく。奥州仙台の伊達家の江戸における御用達、柏屋次郎兵衛が伊達家に献上したもの。 参考文献:日本刀大百科事…

【刀剣紹介】摺り一文字

摺り一文字 銘の「一」の字を、鑢の角で無造作にすってある一文字の刀です。則宗の作という説と、作者不明という説とがあります。遺作に徴すれば、後説が正しいです。大正三年(一五七五)、奥平信昌が長篠城を守り通した功を賞して、織田信長は差料の摺り一文…

【刀剣紹介】新髭切り

新髭切り 1.芸州の厳島神社蔵刀、吉川元長寄進です。 刃長二尺三寸六分(約七一・五センチ)、刃文直刃小乱れまじり。「包次」と二字銘。打ち刀拵え付き。ただし、柄は黒塗りの出し鮫。鞘は錦包み黒塗り。由来は不明。 2.奥州の舞草行重の太刀、源氏の重宝です…

【刀剣紹介】神保長光

神保長光 六千石の旗本・神保家伝来です。明治維新後、同家より取り出したものを福地源一郎入手、糸巻き太刀拵えをつけました。それから福住英勇・坂本金弥・細野次郎へ渡ります。細野家売立のさい、小泉策太郎が八百円で落札したが、当時、神保長光を訛って…

【刀剣紹介】菖蒲正宗

菖蒲正宗 『享保名物帳』焼失之部所載、相州正宗極めの刀です。もと埜田という浪人所持、それを徳川家康に献上したため、永代知行を拝領しました。家康はそれを埋忠明寿・同寿斎に磨り上げさせ、関ヶ原合戦にも佩いて行きました。替え鞘をいくつも作らせ、不…

【刀剣紹介】城和泉正宗

城和泉正宗 奥州津軽家伝来、相州正宗極めの刀です。津軽正宗ともいいます。 刃長二尺三寸三分五厘 (約七〇・七センチ)、板目肌に地沸えよくつく。刃文は彎れ調に小乱れ交じり足・葉・金筋入る。鋩子掃き掛け、焼き詰め風。中心は大磨り上げ、差し表に「城和…

【刀剣紹介】七星

七星 刀の異名です。佐久間象山の嫡子の通称は慶之助、諱は恪です。父象山が元治元年(一八六四)七月十一日、京都において暗殺されると、父の仇を捜すため、母瑞枝と伯父・勝海舟が相談し、三浦慶之助と変名し、近藤勇の新撰組に入れました。七条道場の前で、…

【刀剣紹介】四海波兼光

四海波兼光 「四海波」と金象嵌のある備前長船兼光の刀です。 刃長二尺二寸八分五厘(約六 九・二センチ)、表裏に棒樋をかき流す。真の棟。地鉄は板目肌。刃文は逆乱 れ。鋩子は乱れ込み、先は尖る。大磨り上げ無銘。差し表に「四海波」、裏に「安藤伝十郎六…

【刀剣紹介】地蔵切り孫六

地蔵切り孫六 濃州関住兼元の刀の異名です。伊勢亀山藩主・石川家伝来しました。同家の先祖が長久手の戦か、どこかで夜中、敵と見て切り落としたところ、地蔵尊だったことからの命名です。刀袋の下げ札に「地蔵切孫六」と誌してありました。昭和五年ごろ近藤…

【刀剣紹介】沢井正宗

沢井正宗 伊賀越の仇討ちで、沢井家伝来とされている相州正宗の刀です。この仇討ちの真相は、備前岡山藩士の河合又五郎がささいな遺恨から、寛永七年(一六三〇)七月、江戸において、同藩の渡辺数馬の弟・源太夫(小才治)を殺して出奔、旗本の阿部四郎五郎らの…

【刀剣紹介】猿正宗

猿正宗 猿から贈られた相州正宗の刀です。肥後熊本の飛脚が駿河の薩陀山の麓にさしかかった時、猿を海に引きずり込もうとしている大章魚を切って、猿を助けてやったところ、猿は飛脚の文箱を奪って、山中に逃げました。飛脚が猿を追って行くと、遥か彼方に猿…

【刀剣紹介】篠の雪

篠の雪 刀の切れ味のよさを讃える刀号です。笹の葉の上につもった雪は、払えばすぐ落ちるのを、刀で払えばすぐ胴体の切れ落ちることに例えたものです。篠の雪という異名のついた刀は多くあります。 1.池田勝入斎信輝の濃州関住兼定 これを「笹の露」とするの…

【刀剣紹介】笹の露

笹の露 刀の切れ味のよさを讃えた刀号です。笹の葉においた露は、払えばすぐ落ちるのを、刀で払えば胴体のすぐ切れ落ちるのに例えたものです。 1.濃州関の兼元の刀 「笹露 槇嶋監物所持之」と金象嵌があります。細川幽斎の臣・吉田吉助左衛門が、合戦のたび…

【刀剣紹介】篠剪り

篠剪り 大和国高取(奈良県高市郡高取町)の城主・植村家伝来、吉岡一文字の刀の異名です。笹剪りとも書きます。植村出羽守家存(家政)が徳川家康の父広忠、祖父清康らに敵対するものを討ち取ったことのある刀です。それが下総国古河城主・本多忠良の家に伝わっ…