日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】綱切り貞宗

綱切り貞宗

織田信長の旧蔵刀です。出羽国檜山郡檜山(秋田県能代市)の城主・安東愛季重臣、南部季賢が、紀州の熊野参詣を企て、路銀を得るため、大鷹三羽を連れて西下しました。まず安土城をたずね、それを織田信長に献上しました。奥州から初めての領主の来訪、というので、信長は大いに喜び、近日上洛するから、供奉の列に加わって参れ、といい、その時の差料として、秘蔵の「綱切り貞宗」を貸してくれました。 京都見物や熊野参詣を終えての帰路、貞宗を信長に返そうとすると、そちに取らせる、と言って、季賢に与えました。季賢は帰国すると、それを主君・愛季に献上しました。天正十一年(一五八三)、愛季は、松前慶広が政敵の浅井義正を斬った、ご褒美として、これを慶広に与えました。慶広は慶長十五年(一六一〇)、これを次男の忠広に譲りました。忠広は将軍秀忠に仕えていたが、その嗣子・直広は将軍の勘気をこうむり、知行を召し上げられました。経済的に困ったので、これを将軍に献上したところ、金七十枚を下賜されました。

参考文献:日本刀大百科事典