日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

2017-11-01から1ヶ月間の記事一覧

【刀剣紹介】鄙田青江

鄙田青江 『享保名物帳』所載、備中の青江恒次の刀です。寛永十七年(一六四〇)に、日向半兵衛が本阿弥家に持って来て、十三枚の折紙をつけてもらいました。『享保名物帳』に、「越中富山鄙田半兵衛と申者所持」、とあるのは誤りです。 第一、寛永十七年には…

【刀剣紹介】紅葉山信国

紅葉山信国 『享保名物帳』所載、京の信国作の脇差です。もと江戸城の紅葉山にあった宝蔵所蔵のものを、寛文六年(一六六六)十月八日、将軍御用に移管したものです。 刃長は一尺〇五分(約三一・八センチ) 、または一尺一寸五分五厘(約三五・〇センチ) という…

【刀剣紹介】村雲当麻

村雲当麻 『享保名物帳』所載、大和の当麻極めの短力です。もと関白秀次の母の守り刀です。秀次の菩提を弔うため、文禄五年(一五九六)に、瑞竜寺を今の京都市上京区堅門前町に建てました。この付近を村雲というため、俗に村雲御所と呼ばれました。出家して…

【刀剣紹介】源来国次

源来国次 『享保名物帳』所載、京の来国次作の短刀です。もと相州小田原城主・北条氏綱の差料で「蜘手切り」と呼ばれていました。蜘手は蜘蛛の宛て字で、クモのことです。初め高野山の三宝院にあり、のち同じく南谷の林蔵院の什物(代々伝わる宝物のこと)に…

【刀剣紹介】鳥養来国次

鳥養来国次 『享保名物帳』所載の来国次の短刀です。もと鳥飼宗慶が所持していました。宗慶は摂津国島下郡鳥飼、現在の大阪府茨木市鳥飼の出身で、通称は次郎右衛門、号は松庵・ 隣松斎です。宗慶は入道名です。書道の大家で、御家流より出て、鳥飼流を興し…

【刀剣紹介】塩川来国光

塩川来国光 『享保名物帳』所載、京の来国光の短刀です。もと江州佐和山城主・石田三成の臣・塩川志摩か、播州明石城主・塩川信濃守かの所持といいます。埋忠家で金無拓の二重はばきを作りました。現在もそれがついていて、上貝に「うめたゝ 寿斎 彦一入」と…

【刀剣紹介】長谷川江

長谷川江 『享保名物帳』所載、越中郷義弘作の短刀です。もと織田信長の一族・竹丸の父所持といいます。竹丸が竹千代信氏と同人でしたら、その父は信時、その母は信長の妹です。江州大津の城主・京極高次は、妹の松丸殿が豊臣秀吉の側室でした関係で、同じく…

【刀剣紹介】松井江

松井江 『享保名物帳』所載、越中郷義弘極めの刀です。細川幽斎・忠興の重臣で、豊後杵築城主・松井康之が所持していました。本刀が徳川家に入った事情は不明ですが、細川家が肥後に入国すると、康之の子・興長は八代城に入りました。それは八代城代ではなく…

【刀剣紹介】鍋島江

鍋島江 『享保名物帳』所載、越中郷義弘作の無銘刀です。初め肥前佐賀城主・鍋島直茂が所持していました。同家から埋忠家へきたので、押形を採っておきました。その後、同家から徳川家康に献上しました。おそらく慶長五年(一六〇〇)に、鍋島勝茂が献上した「…

【刀剣紹介】中川江

中川江 『享保名物帳』所載、越中の郷義弘極めの刀です。初め織田信長の長男・信忠の所持でした。それを一族の織田駿河守忠政へ与えました。忠政はのち中川八郎右衛門と改名、加賀の前田家臣となり、本刀を子の宗伴、孫の八郎右衛門へと伝えたといいます。駿…

【刀剣紹介】富田江

富田江 『享保名物帳』所載、越中郷義弘作の太刀です。もと伊勢国安濃郡津の城主・富田左近将監知信の蔵刀、といいますが、加州前田家臣で、八百石を食んでいた富田左近の蔵力、という異説もあります。富田家から、堀左衛門督秀政が金十六枚で買いうけ、豊臣…

【刀剣紹介】大垣正宗

大垣正宗 『享保名物帳』でも、異本にのみ記載されているものです。「由緒不知」となっていますが、上杉家の記録によれば、大垣城主・戸田氏鉄が将軍秀忠に献上したもののため、この刀号が付せられました。金十五枚の折紙は、戸田家時代に付いたものでしょう…

【刀剣紹介】観世正宗

観世正宗 『享保名物帳』所載の刀です。これは初め「森正宗」と呼ばれていました。その由来は不詳です。のち能楽観世流宗家七代・観世太夫元忠の所持でしたので、観世正宗と改称されました。元忠の号は宗雪でなく、宗節が正しいです。本刀を徳川家康が召し上…

【刀剣紹介】島津正宗

島津正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗(無銘)の刀です。 もと薩州の島津家が所蔵していました。同家より徳川家康へ献上し、家康が紀州頼宣へ与えたものでしょう。同家より貞享元年 (一六八四)、本阿弥家へ鑑定を求めてきましたので、二百枚の折紙をつけまし…

【刀剣紹介】小池正宗

小池正宗 『享保名物帳』所載の脇差です。播州姫路城主・本多美濃守忠政が、京都小池通りの旅館で購入したため「小池正宗」と呼びます。忠政より三代目の中務大輔政長が逝去したとき、その遺物として延宝七年(一六七九)七月十二日、嗣子の平八郎忠国は本刀…

【刀剣紹介】宗瑞正宗

宗瑞正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗作の短刀です。もと織田信長の一族・小田井織田家に伝来しました。小田井大学が豊臣秀頼の小姓だった関係で豊臣家に献上しました。本阿弥光徳が相州行光と鑑定し「をたい行光」と鞘書きしました。「をたい」は小田井で…

【刀剣紹介】大青江

大青江 『享保名物帳』所載の刀です。越中富山の前田家所伝によれば、もと上杉謙信所持で上杉景勝から前田利家に贈ったものといいます。長すぎたので本阿弥光室に磨り上げさせ「貞次磨上之 本阿(花押)」と金象嵌を入れさせました。千貫の折紙がついたのも…

【刀剣紹介】鍋島藤四郎

鍋島藤四郎 『享保名物帳』所載、粟田口吉光作の短刀です。初め、肥前佐賀城主・鍋島直茂が所持していました。その子・信濃守勝茂のとき、埋忠家で採った粟田口吉光の短刀の押形に「なべしなの殿」と注記したものがあります。ただし、これは鍋島藤四郎ではあ…

【刀剣紹介】清水藤四郎

清水藤四郎 『享保名物帳』所載、粟田口吉光の短刀です。本刀の出所について『名物帳』には「安芸国しみずより出る」または「芸州清水より出ル」とありますが、芸州に清水という著名な地名はありません。清水家のことでしょう。芸州藩の清水家は天正十年(一…

【刀剣紹介】増田藤四郎

増田藤四郎 『享保名物帳』所載、粟田口吉光の短刀です。もと京都の八幡にいる鶉の愛好家が持っていました。その知人が飼っている優秀な鶉と短刀を交換しました。知人の親類に増田宗善という商人がいて、金二十枚で譲りうけました。それを越前北庄城主・松平…

【刀剣紹介】鷹の巣宗近

鷹の巣宗近 『享保名物帳』所載、三条宗近作の脇差です。 大木の上に光を放つものがあるので、登ってみたところ、鷹の巣の中にこの刀がありました。鷹の子を取ったあとに、刃物を入れておくことがあったからです。それは豊臣秀吉のころだったので、本阿弥光…

【刀剣紹介】結城来国俊

結城来国俊 『享保名物帳』所載、来国俊作の短刀です。もと下総の結城家伝来です。徳川家康の次 男・秀康が、天正十八年(一五九〇)に、結城晴朝の養子となり、この短刀を継承しました。秀康が慶長十二年(一六〇七)に没すると、長男の松平忠直が継承しました…

【刀剣紹介】北野江

北野江 『享保名物帳』所載の名物、郷義弘作の太刀です。本阿弥光瑳・同光益の両人が、泉州堺から買ってきたもので、同光徳が義弘ときめ、千五百貫の折紙をつけました。そして 中心に「江磨上 光徳(花押)」と金象嵌を入れました。この文字は本阿弥光悦が書い…

【刀剣紹介】武蔵正宗

武蔵正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗極めの刀です。刀号の由来について、『享保名物帳』には、宮本武蔵旧蔵説と、紀州徳川家の家来から出たものを、武蔵国江戸で召し上げたから、という説とがあります。 将軍家の『御腰物台帳』では、宮本武蔵説を採って…

【刀剣紹介】堀尾正宗

堀尾正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗極めの短刀です。もと芸州広島城主・福島正則が所持していました。正則は慶長十六年(一六一一)二月、埋忠寿斎に金具を作らせ、拵えをつけてすぐ、遠州浜松城主・堀尾吉晴に金百三十枚で売りました。吉晴が慶長五年(…

【刀剣紹介】無銘藤四郎

無銘藤四郎 『享保名物帳』所載、粟田口吉光極めの短刀です。堺の天王寺屋こと津田宗及が天正八年(一五八〇)二月二十五日、京都において織田信長から見せられた刀剣の中に「無銘藤四郎」の名があります。これは『名物帳』の無銘藤四郎と別物なのか、それと…

【刀剣紹介】横須賀江

横須賀江 『享保名物帳』所載、越中郷義弘極めの刀です。初め遠州城東郡松淵郷横須賀村、現在の静岡県小笠郡大須賀町横須賀から出たもので、郷義弘の極めでした。それを本阿弥光常が、阿波の海部物と鑑定しなおし、十枚の折紙をつけました。元禄十四年(一七…

【刀剣紹介】太郎作正宗

太郎作正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗の太刀です。 もと徳川家康の外伯父で、三州刈屋城 主・水野信元が所持していました。信元は織田信長に属していましたが、武田勝頼に内応の疑いをかけられ、家康のもとに逃げてきました。しかし、信長の怒りは解けず…

【刀剣紹介】福島正宗

福島正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗作の刀です。もと本阿弥光徳の弟・光淳所持で、七百貫 の折紙付きでした。享保(一七一六)ごろは、代も千貫に上がり、浅野但馬守のもとにありました。ただし、但馬守は誤りで、安芸守吉長でなければなりません。 刃長は…

【刀剣紹介】倶利伽羅正宗

倶利伽羅正宗 『享保名物帳』所載、相州正宗極めの短刀です。寛文九年(一六六九)七月三日付で、本阿弥光温の五千貫の折紙がついています。もと浅野家蔵です。出し鮫、角合口拵えは浅野家でつけたのでしょう。柘榴の目貫は後藤祐乗の折紙付きで小柄は赤桐、…