日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】長左文字

左文字

享保名物帳』所載、筑前左文字作の刀です。もと能州七尾城主・長家の伝来でした。九郎左衛門連竜は天正五年(一五七七)、上杉謙信に攻められ、父と兄を失ったので、織田信長に援を乞い、前田利家が加賀の国主になると、その与力を命じられました。のち前田家の老臣となりました。以上の関係で、家伝来の左文字を前田家に献上しました。 元禄十五年(一七〇二)四月二十六日、五代将軍綱吉が前田邸に臨んだとき、世子・吉徳より助長の太刀とともに、本刀を献上しました。宝永四年(一七〇七)七月十八日、将軍の世子・家宣は、次男・家千代のお七夜の祝儀として、本刀を与えました。しかし、家千代は同年九月二十八日に早世しました。その時までは三千貫の折紙でした。『享保名物帳』編集のころには、代金二百枚に上がっていました。戦後、徳川家を出て、現在は蟹仙洞美術館所蔵です。

刃長二尺二寸四分(約六七・九センチ)、身幅広く、反り浅く、大切先。地鉄は板目肌流れ、地沸えつく。刃文は浅い小彎れに、五の目まじり。鋩子は乱れ込み、掃きかけて尖り、返りは浅い。中心は大磨り上げ、目釘孔一つ。佩き表に「左磨上 光徳(花押)」と金象嵌入り。

参考文献:日本刀大百科事典

写真:刀剣名物帳「長左文字

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