日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】乱れ光包

乱れ光包

享保名物帳』所載です。ただし、原本にはなく、本阿弥長根が幕末に追記したものです。中堂来光包作の短刀です。もと前田家の重臣(五万石)・本多安房守政重所持、藩主・前田利常に献上されました。将軍綱吉の養女・松姫が、前田家の世子・吉徳に入興したので、そのお礼として、宝永五年(一七〇八)十一月三十日、藩主・綱紀は、一文字の太刀、遠江長光の刀とともに、本刀を将軍に献上しました。当時すでに金三百枚の折紙付きでした。 明治維新後、大久保一翁が拝領していましたが、明治二十一年、一翁没後、刀は全部、徳川家に預けられたので、本刀は徳川家で買いあげ、昭和八年、重要美術品に指定されました。戦後は佐野美術館の所蔵に帰し、重要文化財にもなっていたが、現在は同館を出ています。(現在は刀剣博物館所蔵)

刃長九寸七分五厘(約二九・五 センチ)、平造り、表裏に刀樋をかく。地鉄は板目肌流れ、地景もある。刃文は珍しい五の目乱れ、砂流しや金筋も走る。鋩子は鋭く尖り、返りは乱れて深い。中心はうぶ。「光包」と在銘。銘振りと刃文からみて、光包が備前在住時代の初期作。

参考文献:日本刀大百科事典

写真:刀剣名物帳「乱れ光包」

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