【刀剣紹介】姫斬り
姫斬り
刀の異名です。
1.源頼光が唐からきた武悪太夫という名工に作らせた、朝霞の後の名です。八幡太郎義家が相伝したころは、毒蛇と改名されていました。義家が馬で宇治橋を渡っていると、突然、波の間から妙齢の美女が現われ、義家を河中に引きずり込もうとしました。すると、腰の毒蛇がひとりでに抜け出し、美女の左腕をばっさり切り落としました。美女は悲鳴をあげて、河中に姿を消しました。それで姫斬りと改名されました。後に曽我五郎時致がこれで、親の敵を討つ、という物語になります。
2.吉川家の蔵刀です。吉川元春が父・毛利元就の館に、夜中出かけて行くと、あとから元春の娘がついて来ました。そんなはずがない。化生の者とにらみ、脇差を抜いて、不意に切りつけました。確かに手応えはあったが、素早く逃げ去りました。したたる血潮の跡をつけて行くと、岩穴の中に消えていました。家来に掘らして見たところ、女が死んでいました。それでその脇差を、姫斬りと名付けました。元春の四世の孫、防州岩国の城主・吉川広嘉が、延宝七年(一六七九)死去した時、形見として、毛利本家の世子・元千代丸(吉就)に贈られました。
参考文献:日本刀大百科事典