日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】上り竜信国

上り竜信国

享保名物帳』追記所載、京の信国の大脇差です。細川忠興豊臣秀吉に献上したもので、拵え付きの刀を入れる三之箱に入れてありました。そのとき本阿弥光徳は、押形をとっています。慶長十六年(一六一一)四月二日、徳川義直徳川家康の使者として大坂城を訪れた時、翌三日秀頼はこれを義直に贈りました。これを紀州頼宣に贈った、とする説は誤りです。以後、尾州徳川家に伝来しました。『享保名物帳』追記には、これと松浦信国を並記しているが、これの鞘書に、「松浦 源左衛門尉信国御脇指銘有 長壱尺九寸分半」とあるから、両者は同一物ということになります。現在は名古屋市徳川美術館保管です。

刃長一尺九寸(約五七・六センチ)、反り五分(約一・五センチ)。本造り。佩き表に、宝珠の下に昇り竜、下に降り竜を彫る。裏には、樋のなかに剣巻き竜を浮き彫りにする。地鉄は小板目肌。刃文は広直辺で、小乱れ少しまじり、足や葉入るが、匂いは締まる。鋩子は佩き表が小丸、裏が尖り、返りは深い。中心は少し磨り上げ、目釘孔三個。銘は佩き表に「源左衛門尉信国」、裏に「応永十一年二月日」と切る。

参考文献:日本刀大百科事典