日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】福島兼光

福島兼光

享保名物帳』追加之部所載、備前長船兼光作の太刀です。福島正則広島城主だったころ、城下の本国寺(日蓮宗)の住持を処罰しました。その後、本刀が同寺にあることが分かり、正則が没収し、自分の佩刀にしたもの正則は元和元年(一六一五)城地を没収され、寛永元年(一六二四)死去しました。本刀が加賀の前田家に入った経緯は不明であるが、寛永十二年(一六三五)、前田家より本阿弥家に鑑定にきたので、金十五枚の折紙をつけました。本阿弥長根は江戸の前田邸において、文化九年(一八一二)三月、本刀のお手入れをしました。それで長根はこれを『享保名物帳』追加之部に入れました。明治十九年十一月、靖国神社大祭のとき遊就館に出品されました。戦後、前田家を出て、現在は重要文化財です。

刃長二尺五寸三分五厘(約七六・八センチ)、庵棟、佩き表に草の剣巻き竜、裏に梵字三個を彫り、その上に表裏とも棒樋と添え樋をかく。地鉄は小板目・小杢目まじりで、地沸えと映りがある。刃文は五の目丁子刃、匂い締まる。鋩子は乱れ込んで、小丸に返る。中心はうぶ。ただし目釘孔は五個。銘は佩き表に「備州長船住兼光」、裏に「観応元年八月日」と切る。

参考文献:日本刀大百科事典