日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】善鬼国綱

善鬼国綱

享保名物帳』焼失之部所載、粟田口国綱の太刀です。

刃長二尺五寸五分(約七七・三センチ)。ただし二尺一寸八分(約六六・二センチ)とする異説もある。

聖護院門跡が大和の大峰山入りするとき、お伴をする善鬼とよばれる山伏が、これを佩用することもあったので、善鬼国綱と名づけました。ただし、古い『享保名物帳』には、前鬼国綱としたものがあります。 役小角は男の鬼を呪をもって人間に立ち返らせました。それを前鬼といい、斧を持って小角の先導になりました。大峰山麓の前鬼村は、その後裔の部落という伝説があります。したがって善鬼は前鬼と書くのが正しいです。さて、『享保名物帳』には大坂御物としたものもあります。おそらく工藤家のものが室町将軍家を経て、豊臣家に入ったのでしょう。その後、徳川将軍家に入り、明暦三年(一六五四)の江戸城炎上で焼失したことになります。なお、代金二十枚の折紙付きだったともいいます。

参考文献:日本刀大百科事典