日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】八町念仏

八町念仏

刀の異名です。雑賀孫市こと鈴木重朝の佩刀です。月の夜、ある者を袈裟斬りにしたところ、八町も念仏を唱えながら行ったあと、倒れたという伝説のある刀です。孫市はのち徳川家康に仕え、水戸の頼房付きとなったので、幕末まで子孫の家に伝来していました。

作者については、守光説と行家説があります。守光説によれば、備前長船守光の作で、永享七年(一四三五)八月の銘があります。

五分(約一・五センチ)ほど磨り上げて、刃長二尺六寸一分(約七九・一センチ)、刃文は五の目丁子乱れ。

維新後これが売りに出たので、今村長賀が岩崎弥之助男爵に買い取らせたといいます。 行家説によれば、刃長二尺七、八寸(約八一・八~八四・八センチ) または二尺八、九寸(約八四・八~八七・九センチ)。

備前行家の作というが、備前に行家はいないので、備中片山一文字派でなければなりません。激戦の跡を物語る切り込みや刀切れが数か所あります。雑賀家が零落したので、水戸の徳川家が買い上げたといいます。すると、関東大震災で焼失したはずです。

参考文献:日本刀大百科事典