日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】道意正宗

道意正宗

享保名物帳』所載、相州正宗の短刀です。泉州堺の商人・岡本道意が掘り出したもので、埋忠寿斎に金具を作らせました。そして、紀州和歌山城主・浅野幸長に売りました。浅野家から水戸の徳川家に贈ったのか、同家から将軍家へ献上しました。彫物に蓮華がありました。祝儀には不向きというので、本阿弥光澄が本阿弥光通に頼んで、蓮華を取ってしまいました。そして元禄十年(一六九七)に、二百枚の折紙をつけました。

水戸家から将軍家へ献上したのは、それから二年後の元禄十二年(一六九九)九月二十五日、将軍綱吉が初めて水戸邸へ行った時でしょう。そのとき綱条から、備前長光の太刀・豊後長円の短刀とともに、相州正宗の脇差を献上しています。その相州正宗が道意正宗でしょう。幕末の将軍家刀剣台帳に本刀は載っていません。明暦三年(一六五七)の江戸城炎上のさい、焼失の名物のうちに道雲正宗があります。これは道意正宗の誤写の可能性があります。しかし『享保名物帳』には焼失之部に入れていません。

刃長は八寸七分(約二六・四センチ)で差し表は樋のなかに三鈷柄の剣、裏は樋のなかに梵字三個と蓮華が浮き彫りになっていた。蓮華は本阿弥に頼んで取ってしまった。刃文は小彎れで、掃きかける。中心には目釘孔二つ。鑢目は筋違い。無銘。

参考文献:日本刀大百科事典

写真:刀剣名物帳「道意正宗」

f:id:seiya3939:20171031190313j:plain