【刀剣紹介】朱判正宗
日本の美、日本刀
まだ腰に刀を差していた時代、日本刀は自分の身を守るためだけではなく拵えの装いや粋な刀装具を周囲に見せ、その刀を差す武士の品格を表していました。また、現代のように自身を彩るものは多くなく、腰に差す刀剣でその人のお洒落さをも表していたといいます。そんな千差万別ある日本刀を紹介していきます。
朱判正宗
『享保名物帳』所載、相州伝正宗極めの脇差です。万治元年(一六五八)閏十二月十日、前田綱紀は襲封のお礼に、祖父利常の遺物として本刀を将軍に献上しました。貞享二年(一六八五)三月六日に、五代将軍綱吉の娘・鶴姫が紀州徳川家の綱教へ入輿した挨拶に登城したところ、綱吉は本刀と郷義弘の刀を与えました。金五百枚の折り紙付きです。
刃長は一尺二分(約三〇・九センチ)で平造り、表裏に刀樋。肌立ち、地沸えのついた板目肌の地鉄に、小彎れ調の五の目乱れをやき、刃縁ほつれ、砂流しかかる。鋩子尖る。中心はうぶ。目釘孔二個。差し表に「元和二 正宗」裏に「光徳(花押)」と朱銘がある。
参考文献:日本刀大百科事典