日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】若楓

若楓

陶晴賢の愛刀で、刃長一尺五寸(約四五・五センチ)、薩摩の波平の作です。天文二十年(一五五一)、晴賢が主君・大内義隆を殺してから間もないある夜、青景越後守邸における花見で、煎海鼠酒(煮乾しの海鼠を入れた酒)をしたたか飲んで、明け方に帰館し、寝室の前まで来たとき、小姓の若杉九郎が、晴賢と乳兄弟の伊香賀采女に対し、殿はまだお帰りがない。どうしたのだろう、と訊ねました。

采女が、殿は煎海鼠酒だ。煎海鼠酒は殿だ、と冗談をいいました。それを立ち 聞きした晴賢が怒り、部屋にとび込み、若楓で斬りつけました。驚いた采女はとび起き、夜具で切先をさけ、庭にとびおりました。晴賢が、唐・天竺まで逃げても、捜し出して首をはねるぞ、と言うのを聞いて、采女は観念しました。廊下にあがり、首をさし出したので、晴賢は若楓で、一刀のもとに首を斬り落としました。

参考文献:日本刀大百科事典