日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】矢目行光

矢目行光

享保名物帳』追記の部所載、「行光」と二字在銘です。徳川将軍から紀州家拝領です。慶安二年(一六四九)、百枚の折紙付きです。拝領はそのころでしょう。後年、紀州家より出羽秋田城主・佐竹家へ贈りました。その時期は不明であるが、佐竹義処の長男・修理大夫義苗は、元禄十二年(一六九九)、二十九歳で父に先立って死去したが、夫人は紀州大納言光貞の娘でした。その関係で、紀州家から婚引き出として、贈られたものでしょう。

本阿弥親俊が明和四年(一七六七)九月、秋田に赴き、佐竹家の蔵刀を鑑定した時の記録によると、偽銘であるから、研ぎ直して相州貞宗、百五十枚に極め直したといいます。以後、佐竹家に伝来しました。現在は同家を出ています。

刃長九寸一分、平造り、無反り、真の棟。渦巻き状の板目肌で、地映りがあって、肌立つ。刃文は彎れに五の目まじり。鋩子は乱れ込んで尖り、返りは深い。中心はうぶで、瓢箪形の目釘孔一個。銘は「行光」とあるが、偽銘。

刀号は差し表、区より二寸(約六・六センチ)上、棟寄りに矢の根の痕があるのに因む。この矢目は、徳川頼宣大坂の陣に参戦し、敵からうけた矢の痕、という俗説がある。頼宣は二度とも出陣はしているが、戦闘には加わっていないから、誤説というほかない。

参考文献:日本刀大百科事典