日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】藤丸

藤丸

1.名刀の名です。奥州の文寿の作です。ただし、膝丸の誤写の疑いもあります。

2.足利将軍義昭の差料です。

中身は、刃長九寸三分五厘(約二八・三センチ)、「備州長船兼光 延文二年七月日」と在銘。合口拵えの刻み鞘が金時絵となり、それに藤の花が銀の切金、葉が金粉または螺鈿となる。柄頭は金無垢、縁と鯉口は金沃懸け、目貫は金無垢の藤の葉、柄は細い藤巻き、栗形は銀無垢、鐺も銀無垢で、菖蒲革の犬招き付き、下げ緒は紫紐で、嫁袋付き。

幕末には大坂の商家・岡野家の所蔵でした。同家の由来書きによれば、藤鞘巻・九条兼光ともいい、もと南北朝期、九条経教の蔵刀を、足利義満今川了俊に命じて模造させたもので、経教は模造刀ができると、「藤丸のさやかにうつる小刀の やきはに波の立つ かとぞ見る」、という和歌を詠んで、義満に贈りました。岡野家の先祖・判官満則が、明徳二年(一三九一)十二月、京都内野の戦における褒美として、将軍義満より拝領、以後岡野家に伝来、ということになっています。それでは将軍義昭の差料、とする説と異なるが、それを傍証する資料を欠きます。

参考文献:日本刀大百科事典