日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】笹貫きの太刀

笹貫きの太刀

薩摩の樺山家伝来、波平行安作の太刀です。現在は国有、重要文化財です。応永(一三九四)ごろの波平行安が妻に、鍛治場を決して覗いてはならぬ、と厳命しておいたのに、妻が覗いたのを怒り、仕上げ中の刀を裏の竹藪に投げ棄てました。そこから夜な夜な妖しい光を発するので、村人たちが行ってみると、刀が地中に逆さに立っていました。その先に竹の落ち葉が無数に突きささっていました。妖しい刀というので、海中に投棄したところ、海中からまた妖しい光を発するので、引き揚げました。その話を聞いて、島津の分家・樺山音久がそれを召しあげ、島津家に献上しました。島津家でもまた怪異なことが起こったので、樺山家に返却された、という伝説があります。ただし、この伝説は、当時の波平鍛治の居住地が、現在の鹿児島市上福元町笹貫だったことから考えついた創作でしょう。

刃長二尺三寸九分五厘(約七二・五センチ)、地鉄は板目に柾目まじり地沸えつく。刃文は直刃。鋩子は小丸。中心はうぶ、「波平行安」と四字銘。黒塗太刀拵えつき。金具には丸十の紋つく。

参考文献:日本刀大百科事典