日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】上野郷

上野江

享保名物帳』 焼失之部所載、郷義弘の刀です。宇都宮城主・本多上野介正純の旧蔵だったので、「上野江」とよびます。正純が元和八年(一六二二)十月、将軍秀忠の勘気をこうむり改易になったとき、闕所道具として幕府に没収され、将軍家蔵となりました。明暦三年(一六五七)の江戸城炎上のさい焼失しました。

刃長二尺三寸四分(約七〇・九センチ)、表裏に棒樋をかき通す。本阿弥光徳が金二百枚の折紙をつけ、埋忠寿斎に磨りあげさせ、差し表に「本多上野介所持」、裏に「義弘磨上之 本阿 (花押)」と金象嵌を入れさせた。しかし『埋忠銘鑑』の押形を見ると、刃文の焼き出しが鑢目の上端から始まり、生中心であることを暴露している。つまり光徳が寿斎にもとの銘を消させ、大磨り上げに見せかけ、義弘の無銘刀を偽造したことになる。現在は所在不明。なお、「常陸江」と同一物の疑いもある。

参考文献:日本刀大百科事典