日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】紀伊国片桐正宗

紀伊国片桐正宗

享保名物帳』焼失の部に収載された相州正宗作の短刀です。単に紀伊正宗・片桐正宗ともいいます。紀州和歌山城主・浅野長政の家臣所持でした。それを長政が召しあげ、埋忠寿斎に金具を作らせ、徳川家康に献上しました。家康はそれを大坂方の片桐且元に与えたとも、且元の嫡子・出雲守孝利に与えたともいいます。ただし前説が正しいです。且元のもとから慶長十三年(一六〇八)二月、再び寿斎のところへ来たので、押形をとっておきました。且元は 弟貞隆の娘を養女にして、本多佐渡守正信の三男・大隅守忠純に嫁入らせました。そのとき、婚引き出としてであろう、且元は本刀を忠純に与えました。 忠純は二万八千石を領していたが、寛永十八年(一六四一)、嫡孫・犬千代が五歳で夭折したため、同家は断絶しました。それまでに本刀を将軍家に献上していたとみえ、『享保名物帳』では「御物」、つまり将軍家所蔵となっています。焼け身となったのは、明暦三年(一六五七)の江戸城炎上のときでしょう。

刃長八寸(約二四・二センチ)、真の棟。刃文は低く丸い五の目乱れで、刃中裂け、刃にそって飛び焼きがある。鋩子は小丸で返りは浅い。なお棟焼きがある。『享保名物帳』には無銘とあるが、「正宗」と二字銘だった。現在は所在不明。

参考文献:日本刀大百科事典