日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】楠左文字

左文字

享保名物帳』所載の短刀です。もと織田信長の祐筆頭・楠長庵所持というが、長庵は長諳の誤りです。長諳は楠正儀九代の孫と称し、諱は正虎、式部卿法印と号しました。豊臣秀吉の祐筆も勤めました。長諳から尾張徳川義直へ渡り、義直は本刀を井上主計頭正就に贈りました。ただし、本阿弥注慶が所持していたものを、井上正就へ譲った、という異説もある。

享保名物帳』編集のころの所持者を、井上相模守とするのは誤りです。その子・河内守正岑の代になっていました。本阿弥家では初め七百貫の折紙を出したが、のち千貫に引きあげました。

刃長は七寸三分(約二三・一センチ)説と、七寸四分(約二三・四センチ)説とあるが、後説が正しい。在銘で、表の「左」という銘の上下に目釘孔がある。裏の「筑州住」は目釘孔にかかっていた。現在は所在不明。

参考文献:日本刀大百科事典