日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】烏丸藤四郎

日本の美、日本刀

まだ腰に刀を差していた時代、日本刀は自分の身を守るためだけではなく拵えの装いや粋な刀装具を周囲に見せ、その刀を差す武士の品格を表していました。また、現代のように自身を彩るものは多くなく、腰に差す刀剣でその人のお洒落さをも表していたといいます。そんな千差万別ある日本刀を紹介していきます。

烏丸藤四郎

享保名物帳』所載の短刀です。もと公卿の烏丸家の伝来です。烏丸光広は慶長十四年(一六〇九)に、遊蕩(酒や女遊びにふけること)の罪で流罪になったくらいなため、おそらく光広が遊蕩費に当てるため、売却したのでしょう。本阿弥光甫が十六歳のときに砥いでいます。烏丸家から出たので、新しく入手した人が砥ぎ直したのでしょう。延宝(一六七三)のころから、京都の町人・三木権太夫方にありました。『名物帳』の異本には、小笠原伊代守にこれ有り、とあります。小笠原家は豊前小倉城主で、伊予守は忠総が寛保元年(一七四一)任じられて以後、代々若年のころの官名です。したがって、幕末には小笠原家所蔵だったことになります。しかし、現在は所在不明です。

刃長は八寸五分五厘(約二五・九センチ)で、ただし、中心先を切ってあったから、原寸はもっと長かったことになる。「吉光」と二字在銘。『名物帳』には「不知代」とあるが、三百枚の折紙付きだった。

参考文献:日本刀大百科事典