日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】江戸長銘正宗

日本の美、日本刀

まだ腰に刀を差していた時代、日本刀は自分の身を守るためだけではなく拵えの装いや粋な刀装具を周囲に見せ、その刀を差す武士の品格を表していました。また、現代のように自身を彩るものは多くなく、腰に差す刀剣でその人のお洒落さをも表していたといいます。そんな千差万別ある日本刀を紹介していきます。

江戸長銘正宗

享保名物帳』焼失之部に所載されています。蒲生氏郷が金八十枚で求めていたものを、その子・藤三郎秀行が徳川家康の三女振子を娶っていた関係で、家康に献上しました。前田利常が慶長十九年(一六一四)九月九日、左少将に進んだのを祝して、将軍秀忠から本刀を下賜されました。将軍家光が寛永六年(一六二九)四月二十六日に利常の別邸に臨んだとき本刀を献上しました。明暦三年(一六五七)正月の振り袖火事で焼失した後、廃棄されたとみえ、将軍家『御腰物台帳』にも記載はありません。

刃長九寸六分(約二九・一センチ)で菖蒲造り、表裏に樋をかく。蒲生氏郷が埋忠寿斎に金具を作らせたとき、採っておいた押形によれば、樋のなかに素剣を彫ったようである。中心は目釘孔三つ「相模国鎌倉住人正宗 正和三年十一月日」と在銘。刀号はこの長銘から採ったことがわかる。

参考文献:日本刀大百科事典