日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】横山貞宗

横山貞宗 加賀藩の重臣・横山式部長治所持、相州貞宗の刀です。刃長不明です。長治は山城守長和(三万石)の三男、初め神谷守孝(九千石)の養子です。慶長十年(一六〇五)、伯父・横山長秀(九千二百五十石)が死去すると、その跡を継ぎました。慶長十九年(一六一…

【刀剣紹介】吉野貞宗

吉野貞宗 相州貞宗作の刀です。豊臣秀吉が、徳川家康の次男で、秀吉の養子になった結城秀康に与えたもので、その後、子の忠直をヘて、孫の光長に伝わりました。その後は消息不明です。刃長不明、鎬造りで、鎬地に素剣を二筋彫る。刃文は大彎れで、鋩子は丸で…

【刀剣紹介】余野山広次

余野山広次 土佐藩主・山内一豊の差料です。父・但馬守盛豊のころから、山内家重代といわれていたものです。一豊は三河の牧野政倫のもとにいた永禄三年(一五六〇)、政倫の命にそむいた家士を、これで一刀両断しました。 刃長一尺九寸三分(約五八・五センチ)…

【刀剣紹介】鎧裂装

鎧裂装 刀の異名です。濃州坂倉関派の正利の作です。尾州岩倉(愛知県岩倉市)城主・織田信安の秘蔵刀です。信安は嗣子・信賢に追われて流浪の身になったが、山内一豊の旧主でした。それで一豊が慶長五年(一六〇〇)、土州高知城主に封じられると、直ちに高知を…

【刀剣紹介】涌泉

涌泉 中山義弘作の刀の異名です。大野基が義弘に至急、一刀を打ってくれ、と頼みました。たまたま義弘は掘貫き井戸を掘っている最中だったので、費用が足りないようだから、出して下さるなら、至急打ち上げましょう、と言いました。費用を出してくれたので、…

【刀剣紹介】八幡左文字

八幡左文字 豊前中津城主奥平家が某年、徳川将軍よりの拝領刀です。無銘極めの筑前左文字の作です。 拵えの鞘に葵紋の蒔絵。刃長二尺三寸五分(約七一・二センチ)。奥平家の記録には、山城国八幡山つまり男山の麓での鍛造とあるが、それは誤り。男山八幡宮よ…

【刀剣紹介】有性剣

有性剣 神秘な性能を有する刀です。多くの刀のなかから、有性剣を選び出すには、左の中指と無名指の爪の甲を、母指の腹をもって抑え、小指と示指を立てたまま、心のなかで、「唵 有性剣者見ソワカ」、と五回唱えると、有性剣は星がまたたくような光を放つと…

【刀剣紹介】守山国包

守山国包 もと奥州守山の領主・松平家蔵でした。今村長賀がこれを求め、その死後、土佐の山内家に納まったものです。 刃長二尺三寸八分(約七二・一センチ)弱。柾目肌美しく、彎れ気味の直刃に小乱れまじり。中心の棟方が磨られていて、「山城大掾藤原国包 寛…

【刀剣紹介】八雲正宗

八雲正宗 奥州仙台藩主・伊達家伝来、相州正宗極めの刀です。 刃長二尺三寸一分(約七〇・〇センチ)。表裏に棒樋をかく。無銘、「八雲」と金象嵌入り。安永九年(一七八〇)卯月三日付けで、金七百枚の折紙付く。そのとき本阿弥家で、これは千枚になるだろう、…

【刀剣紹介】森川江

森川江 郷(江)義弘作の刀の異名です。泉州堺の天王寺屋こと 津田宗及が、天正八年(一五八〇)二月二十二日、織田信長を訪れたさい、それを拝見しました。もと森川某所持といいます。おそらく試し斬りの達人だった森川出羽守重俊の父・金右衛門尉氏役所持でし…

【刀剣紹介】村雲江

村雲江 『享保名物帳』の原本にはなく、後世に追記したものです。越中の郷義弘極めの刀です。本阿弥光徳が江州から取り出してきて、豊臣秀吉に見せたところ、村雲のような刃文だ、と言ったので、それが刀号となりました。それが加賀の前田家に伝来していて、…

【刀剣紹介】村雨

村雨 刀の号です。日置流弓術の秘伝・村雨が、葉末においた朝露に、村雨がさっと降りかかると、露がころりと落ちる、あるいは村雨の風で、草木がばっと分かれる説明されているように、この刀で斬れば、首がころりと落ちる、あるいは体がばっと二つに分かれる…

【刀剣紹介】目眠り刀

目眠り刀 上州大胡(群馬県勢多郡大胡町)城主・牧野讃岐守康成の蔵刀です。大和の保昌貞吉極めの刀です。康成がまだ三河にいた時分、売物にきたこの刀を、徳川家康に見せたところ、よく切れる。買っておけ、と言いました。それで買っておくと、試し切りのある…

【刀剣紹介】武蔵野

武蔵野 鈴木正雄作刀の号です。 刃長二尺四寸八分(約七五・一センチ)、刃文は中直刃。銘は差し表に、「文久三年二月 東都剣工源正雄」、裏 に「蝦夷の南海宇賀浦の砂鉄以て 武蔵国江戸に於て造り むさし野と名付」と切る。 参考文献:日本刀大百科事典

【刀剣紹介】六つ股長義

六つ股長義 相州小田原城主・大久保家伝来、備前長船長義作の刀です。徳川家康は天正二年(一五七四)四月、遠州犬居(静岡県周智郡春野町)の城主・天野景貫が、武田方だったので、これを攻略すべく軍を出したが、犬居の南を流れる気田川が増水して渡河できませ…

【刀剣紹介】百足丸

百足丸 刀の異名です。 1.小田原北条氏の子孫で、のち幕臣となった北条家伝来です。 刃長二尺四寸七分(約七四・八センチ)。表裏に棒樋をかき、佩き表の樋のなかに、「大悲多門天」と彫る。刃文は五の目丁子乱れ。中心はうぶ。佩き表に「備州長船秀光」、裏に…

【刀剣紹介】麦作り

麦作り 古備前恒則の刀の異名です。源頼朝が治承四年(一一八〇)、兵をあげた時、佐々木秀義の六男・吉田厳秀は、まだ少年だったが、相州足柄郡土肥郷の相山において、頼朝の軍に加わりました。それを賞して、頼朝が与えたものです。あるいは菱作りの誤写かも…

【刀剣紹介】向井青江

向井青江 江戸幕府の船奉行・向井家伝来の備中青江の刀です。天正十一年(一五八三)、北条方の城攻めのさい、向井兵庫頭正綱は、北条方の鈴木弾次郎と刀をまじえ、上顎から下歯にかけて、見事に切り落としました。家康もその刀を見て、切れ味に驚きました。そ…

【刀剣紹介】乱れ髪一文字

乱れ髪一文字 安芸の厳島神社の宝刀です。 刃長一尺五寸四分(約四六・七センチ)、菖蒲造り、無銘。戦国期の小さ刀拵え付き。柄は金の打ち出し較、目貫は金無垢の竜、柄糸は茶色で平巻き、頭は角、縁は赤銅で樋形、鎺は一重の金で縦筋入る。栗形と返り角も金…

【刀剣紹介】水田長光

水田長光 筑後柳川城主・立花宗茂の旧蔵刀の異名です。征韓の役のさい、家臣の風斗就澄が敵兵を五人斬り、六人目に刀が折れました。それでも脇差をもって敵を倒しました。宗茂はそれを賞して、水田長光を与えました。その後、海戦のさい、水田長光をもって敵…

【刀剣紹介】見返り元重

見返り元重 備前長船元重作の刀です。 刃長二尺三寸一分五厘(約七一・一センチ)。直刃に小乱れまじりの刃文。中心に折り返し銘で、「備前国長船住元重」とあり、裏に「見返 昔某氏斬人某人顧而為二依名之 元禄二已夏熊本侯所贈於養世公今茲明治元辰秋授臣菅…

【刀剣紹介】松倉江

松倉江 越中国松倉住郷義弘作の刀の異名、と見られる場合もあるが、本来は松倉住人郷ノ義弘という意味です。江と郷とを通じ用いります。松倉郷と書けば、越中国新川郡の地名のようであるが、松倉という郷はありませんでした。織田信長は永禄三年(一五六〇)、…

【刀剣紹介】松古葉

松古葉 刀の異名です。土浦藩士・鈴木家蔵の刀で、差し表に「備前国住与三左衛門尉祐定 五郎左衛門尉清光」、裏に「進上谷光信殿 松古葉 大永六年八月吉日」と切ります。松の古葉が触れるとすぐ落ちることを、この刀で触れると、胴がすぐ落ちることにかけた…

【刀剣紹介】松浦信国

松浦信国 『享保名物帳』追記の部所載、尾州徳川家蔵です。これの説明に、「足を上り竜とも云、脇差の由、光律被申」とあります。これは本阿弥長根が、元文二年(一七三七)没の本阿弥光律の記録を見て書いたものです。光律は『享保名物帳』編集当時、生存して…

【刀剣紹介】舛屋江

舛屋江 『享保名物帳』焼失之部所載、越中郷義弘極めの刀です。増屋江とも書きます。もと京都小川通りの舛屋了二所持でした。宇喜多秀家が豊臣秀吉へ献上しました。埋忠明寿・寿斎に命じて、刃長二尺一寸一分(約六四・〇セン チ)、または二尺一寸一分五厘(約…

【刀剣紹介】母子丸

母子丸 名刀の異名です。謡曲『紅葉狩』の主人公にもなっている、余五将軍・平維茂の佩刀です。母子丸は慕狐丸の宛て字かともいいます。維茂の八代の孫・平長茂は、文治(一一八五)ごろの人であるが、生まれるとすぐ行方不明になりました。四年後に狐塚、つま…

【刀剣紹介】星亨斬り

星亨斬り 東京市参事会長の星亨を、明治三十四年六月二十一日、参事会員室において殺した時の伊庭想太郎の刀です。それは伊庭家伝来の武州住正重とする説があるが、本阿弥光遜が大正十三年十一月二十五日、警視庁の刑事課鑑識係室で見たのは、越前守助広の角…

【刀剣紹介】疱瘡正宗

疱瘡正宗 元禄十六年(一七〇三)六月二十八日、伊勢の津(三重県津市)城主・藤堂高睦が襲封の礼として、将軍綱吉に献上していたものです。紀州徳川家の頼職が早世、弟の真方が襲封することになったので、将軍綱吉は片諱を与えて吉宗と改名させ、宝永二年(一七…

【刀剣紹介】振分髪

振分髪 1.織田信長の差料 相州正宗の作、大磨り上げ無銘であるため、細川幽斎が、「くらべこし振分髪もかたすぎぬ 君ならずして誰かあぐべき」、という在原業平の歌から採って、名付けたものです。幕末には周防国岩国の吉川家に伝来していました。 刃長二尺…

【刀剣紹介】不動丸

不動丸 大久保石見守長安の刀です。武州下原照重の篆書体の銘で、刃長二尺一寸六分(約六五・四センチ)の刀に、「比刀去慶長ノ頃大久保石見守 号不動丸□指領タリ 爾後三拾余年ヲヘテ正保内皮曆 甲府在番ノ時 不計為得求之 渡辺久左衛門尉源朝臣善光所持」、と…