日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

刀剣紹介

【刀剣紹介】野干剣

野干剣 大和の宗弘作の剣の異名です。これにはまだ焼刃はなかったが、夜の闇を照らして、明るくしました。野干とは狐のことで、尾を打って火を出す、つまり狐火の伝説があるから、これに基づく命名でしょう。宗弘は欽明天皇御宇、法清という逸年号時代の工と…

【刀剣紹介】守山国包

守山国包 もと奥州守山の領主・松平家蔵でした。今村長賀がこれを求め、その死後、土佐の山内家に納まったものです。 刃長二尺三寸八分(約七二・一センチ)弱。柾目肌美しく、彎れ気味の直刃に小乱れまじり。中心の棟方が磨られていて、「山城大掾藤原国包 寛…

【刀剣紹介】文殊の槍

文殊の槍 河内守包定作の槍です。包定は手掻包永の末葉で、延宝(一六七三)ごろの人です。大和から江戸へくだり、常州土浦藩主・土屋家のお抱え工となりました。麻布の御薬園の別荘にあった柳の井、実は善福寺の惣門のうちにあった柳の井、という名水をくんで…

【刀剣紹介】八重畳

八重畳 細川幽斎の差料です。「薩州住清左 大永三年八月日」と在銘です。田の畦にネコブキ、つまり藁で編んだ莚を八枚重ねて敷いた上に死体をのせ、米田是政に胴を試させたところ、庄まで切り通ったことからの命名です。三斎はこれを四男・立孝に与えました…

【刀剣紹介】薬王

薬王 粟田口国吉の太刀の異名です。正平六年(一三五一)十二月、駿河の薩多山合戦のとき、今川範国はこの刀をもって、兜を二つ重ねて被っている敵に切りつけ、二の鉢まで断ち割ったので、薬王という異名をつけました。二た鉢、つまり二た八は十六、薬は八と九…

【刀剣紹介】八雲正宗

八雲正宗 奥州仙台藩主・伊達家伝来、相州正宗極めの刀です。 刃長二尺三寸一分(約七〇・〇センチ)。表裏に棒樋をかく。無銘、「八雲」と金象嵌入り。安永九年(一七八〇)卯月三日付けで、金七百枚の折紙付く。そのとき本阿弥家で、これは千枚になるだろう、…

【刀剣紹介】最上正宗

最上正宗 出羽国山形城主・最上義光が、関ヶ原合戦の初め、上杉景勝の軍を防いだ功を賞し、徳川家康が与えた相州正宗の脇差です。 最上家は、義光の孫・義俊の非行により、元和八年(一六一二)、二十四万石からわずか一万石に減封となりました。そのため正宗…

【刀剣紹介】森川江

森川江 郷(江)義弘作の刀の異名です。泉州堺の天王寺屋こと 津田宗及が、天正八年(一五八〇)二月二十二日、織田信長を訪れたさい、それを拝見しました。もと森川某所持といいます。おそらく試し斬りの達人だった森川出羽守重俊の父・金右衛門尉氏役所持でし…

【刀剣紹介】紅葉狩り

紅葉狩り 加藤清正の佩刀、備前長船兼光作、三尺三寸(約一〇〇センチ)の太刀の異名です。朝鮮における虎狩りのさい、それで虎の首を切り落としたといいます。江戸城の石垣用として、肥後から巨石を献上したさ い、清正は三尺三寸の兼光を指し、手に扇をもっ…

【刀剣紹介】村雲江

村雲江 『享保名物帳』の原本にはなく、後世に追記したものです。越中の郷義弘極めの刀です。本阿弥光徳が江州から取り出してきて、豊臣秀吉に見せたところ、村雲のような刃文だ、と言ったので、それが刀号となりました。それが加賀の前田家に伝来していて、…

【刀剣紹介】村雨

村雨 刀の号です。日置流弓術の秘伝・村雨が、葉末においた朝露に、村雨がさっと降りかかると、露がころりと落ちる、あるいは村雨の風で、草木がばっと分かれる説明されているように、この刀で斬れば、首がころりと落ちる、あるいは体がばっと二つに分かれる…

【刀剣紹介】名家桜

名家桜 大和守元平作の短刀の号です。 差し表に「奥大和守平朝臣元平 文政辛巳春 行年七十八歳」、 裏に「文化因子夏 公女郁君入典子近衛忠熙卿時 盛美從左府基前公 祝賜方金因以造之」、棟に「名家桜 従二位光実」と切る。 郁君とは薩摩藩主・島津斉興の養…

【刀剣紹介】目眠り刀

目眠り刀 上州大胡(群馬県勢多郡大胡町)城主・牧野讃岐守康成の蔵刀です。大和の保昌貞吉極めの刀です。康成がまだ三河にいた時分、売物にきたこの刀を、徳川家康に見せたところ、よく切れる。買っておけ、と言いました。それで買っておくと、試し切りのある…

【刀剣紹介】面の薙刀

面の薙刀 細川忠興(三斎)の薙刀です。天正八年(一五八〇)、丹後十二万石を与えられた忠興は、旧領主・一色家のうち、最後まで抵抗する義有(義定・義俊)に、九年(一五八 二)五月、妹を与えて懐柔した後、十年(一五八二)九月八日、居城・八幡山によび、饗応の…

【刀剣紹介】武蔵野

武蔵野 鈴木正雄作刀の号です。 刃長二尺四寸八分(約七五・一センチ)、刃文は中直刃。銘は差し表に、「文久三年二月 東都剣工源正雄」、裏 に「蝦夷の南海宇賀浦の砂鉄以て 武蔵国江戸に於て造り むさし野と名付」と切る。 参考文献:日本刀大百科事典

【刀剣紹介】村雲久国

村雲久国 『享保名物帳』焼失之部所載、粟田口久国作の太刀です。もと関白秀次の母の守り刀です。秀次の菩提を弔うため、文禄五年(一五九六)、瑞竜寺を今の京都市上京区竪門前町に建てました。その付近を村雲というので、俗に村雲御所と呼ばれました。出家し…

【刀剣紹介】村雲丸

村雲丸 粟田口久国作の太刀です。 佩き表に「藤次郎久国」、裏に「村雲丸」と切る。中心は初めうぶで、目釘孔も一個の、のち雉子股になおされ、目釘孔も二個に増えている。これと「享保名物」の村雲久国とは、別物であろう。 参考文献:日本刀大百科事典

【刀剣紹介】陸奥新藤五

陸奥新藤五 『享保名物帳』所載、相州の新藤五国光作の短刀です。もと会津城主・蒲生氏郷所持でした。それから子の秀行、孫の忠郷に伝わりました。忠郷はわずか十歳で藩主となり、老臣・森川半弥の輔導をうけていたので、これを半弥に与えました。忠郷が寛永…

【刀剣紹介】六つ股長義

六つ股長義 相州小田原城主・大久保家伝来、備前長船長義作の刀です。徳川家康は天正二年(一五七四)四月、遠州犬居(静岡県周智郡春野町)の城主・天野景貫が、武田方だったので、これを攻略すべく軍を出したが、犬居の南を流れる気田川が増水して渡河できませ…

【刀剣紹介】向井国広

向井国広 江戸幕府の船奉行・向井忠勝所持、堀川国広作の脇差です。 刀長一尺二分(約三〇・九センチ)、平造り。地鉄は小板目肌詰まり、地沸えつく。刃文は中直刃、小沸え出来。鋩子小丸。差し表に杖、裏には樋のなかに、払子の浮き彫り。その下に「錯凌臓雪…

【刀剣紹介】蜈蚣切り

蜈蚣切り 俵藤太秀郷こと藤原秀郷が蜈蚣(百足)を切った、という伝説のある太刀です。琵琶湖にすむ竜神から、江州野洲郡の三上山、または滋賀郡の比良山にすむ蜈蚣に、夜な夜な悩まされるので、退治してくれ、と頼まれました。承諾して、竜神のいる湖底の竜宮…

【刀剣紹介】百足丸

百足丸 刀の異名です。 1.小田原北条氏の子孫で、のち幕臣となった北条家伝来です。 刃長二尺四寸七分(約七四・八センチ)。表裏に棒樋をかき、佩き表の樋のなかに、「大悲多門天」と彫る。刃文は五の目丁子乱れ。中心はうぶ。佩き表に「備州長船秀光」、裏に…

【刀剣紹介】むき物安吉

むき物安吉 薩州島津家伝来です。 刃長九寸三分(約二八・二センチ)、「安吉」と在銘。もと藩主のお側に置いてあったもの。異名の意味は不詳。 参考文献:日本刀大百科事典

【刀剣紹介】麦作り

麦作り 古備前恒則の刀の異名です。源頼朝が治承四年(一一八〇)、兵をあげた時、佐々木秀義の六男・吉田厳秀は、まだ少年だったが、相州足柄郡土肥郷の相山において、頼朝の軍に加わりました。それを賞して、頼朝が与えたものです。あるいは菱作りの誤写かも…

【刀剣紹介】蜈蚣槍

蜈蚣槍 旗本の水野十郎左衛門家伝来の槍の異名です。濃州関の兼光作の大身槍です。十郎左衛門成之の弟・又八郎忠丘家の所伝によれば、幡随院長兵衛は水野家の風呂に入るときも、刀を浴室に持ちこみ、床に敷いてあった酒弧の下にかくしました。 それをのぞき…

【刀剣紹介】三好正宗

三好正宗 『享保名物帳』焼失之部所載、相州正宗在銘の短刀です。越後国刈羽郡三島郷(新潟県柏崎市)の郷士・三島典膳が、わざわざ相州鎌倉に行って造らせたもの、という話があるが、これは後世の創作です。三好長慶が本阿弥光利の取り次ぎで、金十六枚で入手…

【刀剣紹介】向井青江

向井青江 江戸幕府の船奉行・向井家伝来の備中青江の刀です。天正十一年(一五八三)、北条方の城攻めのさい、向井兵庫頭正綱は、北条方の鈴木弾次郎と刀をまじえ、上顎から下歯にかけて、見事に切り落としました。家康もその刀を見て、切れ味に驚きました。そ…

【刀剣紹介】三好江

三好江 1.『享保名物帳』焼失之部所載、越中の郷義弘極めの太刀です。三好長慶旧蔵といいます。三好重代の郷義弘の太刀は、刃長二尺六寸五分(約八〇・三センチ)ありました。三好郷はこれを磨り上げたものでしょう。 豊臣秀吉が天正十三年(一五八五)、紀州名…

【刀剣紹介】乱れ髪一文字

乱れ髪一文字 安芸の厳島神社の宝刀です。 刃長一尺五寸四分(約四六・七センチ)、菖蒲造り、無銘。戦国期の小さ刀拵え付き。柄は金の打ち出し較、目貫は金無垢の竜、柄糸は茶色で平巻き、頭は角、縁は赤銅で樋形、鎺は一重の金で縦筋入る。栗形と返り角も金…

【刀剣紹介】三寅丸

三寅丸 菅恒の刀の異名です。万寿三年(一〇二六)作の太刀の銘に、「寅年寅日寅時三月三日 菅恒」とありました。源頼朝が伊豆国田中(静岡県田方郡大仁町)において、伊豆山権現(熱海市伊豆山)から授けられたといいます。菅恒の住地については、山城・丹波とも…