日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

享保名物帳

【刀剣紹介】宗易正宗

宗易正宗 『享保名物帳』焼失之部所載、相州正宗作の短刀です。細川幽斎が豊臣秀吉に献上しました。秀吉が利休に、何か一品遣そう、といったところ、正宗の脇差を戴きたい、といったので、長銘の正宗を与えました。利休はそれに拵えをつけるべく、以前買って…

【刀剣紹介】善鬼国綱

善鬼国綱 『享保名物帳』焼失之部所載、粟田口国綱の太刀です。 刃長二尺五寸五分(約七七・三センチ)。ただし二尺一寸八分(約六六・二センチ)とする異説もある。 聖護院門跡が大和の大峰山入りするとき、お伴をする善鬼とよばれる山伏が、これを佩用すること…

【刀剣紹介】実休光忠

実休光忠 『享保名物帳』燒失之部所載、三好之康入道実休所持、備前光忠の太刀です。もと江州甲賀郡三雲城主・三雲对馬守定持所持でした。のち愛刀家の三好義賢入道実休が入手、同家では三雲光忠と呼んでいました。実休が永禄三年(一五六〇)三月五日、泉州南…

【刀剣紹介】菖蒲正宗

菖蒲正宗 『享保名物帳』焼失之部所載、相州正宗極めの刀です。もと埜田という浪人所持、それを徳川家康に献上したため、永代知行を拝領しました。家康はそれを埋忠明寿・同寿斎に磨り上げさせ、関ヶ原合戦にも佩いて行きました。替え鞘をいくつも作らせ、不…

【刀剣紹介】凌藤四郎

凌藤四郎 『享保名物帳』焼失之部所載、粟田口吉光の短刀です。鎬藤四郎とも書きます。もと阿波の細川家伝来でした。それを織田信長の臣・佐久間信盛が入手、それを信長へ 献上しました。天正九年(一五八一)七月二十七日、信長は三男信孝に与えました。その…

【刀剣紹介】注連丸行平

注連丸行平 『享保名物帳』焼失之部所載、豊後行平の太刀です。 刃長二尺七寸三分五厘(約八二・九センチ)。刀号は、もと神前に注連縄のように、横に懸けてあったことによる。甲府宰相綱重所持、綱重は江戸城中にいたので、明暦三年(一六五七) の江戸城炎上の…

【刀剣紹介】塩河来国光

塩河来国光 『享保名物帳』所載、京の来国光の短刀です。もと江州佐和山城主・石田三成の臣・塩川志摩か、播州明石城主・塩川信濃守かの所持といいます。埋忠家で金無垢の二重鎺を作りました。現在もそれがついていて、上貝に「うめたゝ 寿斎 彦一入」と銘が…

【刀剣紹介】獅子貞宗

獅子貞宗 『享保名物帳』焼失之部所載、相州貞宗作の脇差です。豊臣家の蔵刀で、よほど貴重視したとみえ、一之箱に入れてありました。本阿弥光徳も刀絵図を描いています。異名は拵えの目貫が獅子の図だったことによります。 刃長一尺二寸五分(約三七・ 九セ…

【刀剣紹介】塩河藤四郎

塩河藤四郎 『享保名物帳』焼失之部所載、粟田口吉光の短刀です。江州佐和山城主・石田三成の臣・塩川志摩(佐助・喜左衛門)か、播州明石城主・塩川信濃守かの所持だったものです。その後、徳川将軍家蔵となったが、明暦三年(一六五七)の大火で焼失しました。…

【刀剣紹介】三斎来国次

三斎来国次 『享保名物帳』焼失之部所載、山城の来国次の作です。奈良から出たものを、細川三斎が求め、のち徳川家康に献上したものです。無銘を本阿弥光徳が来国次と極めたものです。 刃長九寸五厘(約二七・四センチ)。江戸城の刀剣台帳第七番、尤一の箱に…

【刀剣紹介】真田藤四郎

真田藤四郎 『享保名物帳』焼失之部所載、粟田口吉光作の短刀の異名です。ただし古い写本にはこれを載せていません。信州松代城主・真田伊豆守信之所持でした。のち徳川将軍家蔵となり、明暦三年(一六五七)の大火で焼失しました。 刃長八寸一 分(約二四・五…

【刀剣紹介】篠造り

篠造り 1.足利家重代、備前一文字則宗の太刀の異名です。小竹造り、小竹切り、篠丸ともいいます。ほかに二つ銘という別称のあるのは、「備前国則宗」という銘の「備前」が朽ち、「則」のように見えるので、「則国則宗」つまり則国と則宗の合作と誤読したため…

【刀剣紹介】権藤鎮教薙刀

権藤鎮教薙刀 權藤平左衛門尉行澄所持、豊後高田住平鎮教作の薙刀です。『享保名物帳』追記の部に記載されています。朝鮮出兵のさい、敵兵が虎を黒田如水に向けて、けしかけました。主君危しとみて、権藤某がこの薙刀をふるい、虎を仕留めたという説は誤りで…

【刀剣紹介】小乱れ藤四郎

小乱れ藤四郎 『享保名物帳』追記の部所載、粟田口吉光の短刀です。豊臣家の所蔵、大坂落城のさい焼失したのであろう、所在不明です。ただし本阿弥光徳のとった押形があります。 刃長七寸二分五厘(約二二・〇センチ)、平造り、浅い五の目乱れをやく。鋩子は…

【刀剣紹介】駒井藤四郎

駒井藤四郎 『享保名物帳』星野求与本の追記の部所載の短刀です。粟田口吉光の作です。駒井は豊臣秀吉に仕え、三万六千三百石を領していた駒井中務少輔重勝でしょう。重勝は関ヶ原の役で西軍に加わったため、領地を没収されました。それで愛刀吉光を手放した…

【刀剣紹介】御鬢所行平

御鬢所行平 『享保名物帳』焼失之部所載、豊後行平の太刀です。豊臣秀吉が理髪や着換えをした御鬢所に、備えつけの太刀です。ただし『豊臣家御腰物帳』には、二之箱に収納とあります。大坂落城のさい焼失しました。ただし『本弥光徳刀絵図』に押形所載されて…

【刀剣紹介】小子柏

小子柏 『本阿弥光悦押形』所載、大和手掻包永の太刀です。小子柏は児手柏と同義であろうが、『享保名物帳』の児手柏包永とは同名異物です。 佩き表は五の目乱れで、鎬を越す大乱れがまじり、一枚風に返りが長く、かつ刃中に飛び焼きが大小二個ある。裏は直…

【刀剣紹介】小尻通し新藤五

小尻通し新藤五 『享保名物帳』焼失之部所載の脇差です。もと大坂城にあって「一之箱」に入れてあったほど重宝視されていました。おそらく関東管領・足利家重代の「鐺通し」と同一物でしょう。本阿弥光徳が採ったこれの押形を、埋忠寿斎が元和元年(一六一五)…

【刀剣紹介】小国行

小国行 『享保名物帳』焼失之部所載の太刀です。もと豊臣家の蔵刀で、二之箱に入れてありました。「小」国行というのは、同家には「新身国行」のような、もっと長い来国行の太刀があったので、それに対比しての称呼でしょう。 刃長は二尺五寸(約七五・八セン…

【刀剣紹介】香西長光

香西長光 『享保名物帳』所載の刀です。これはもと香西又六元長所持でした。元長は細川政元の部将で、政元には実子がなく、澄之・澄元という二人の養子がありました。澄元が政元の寵愛をうけ、かつ三好長輝の補佐をえて優勢なのに対抗して、香西元長は澄之を…

【刀剣紹介】江雪正宗

江雪正宗 『享保名物帳』焼失之部所載、相州正宗の刀です。「江雪左文字」と同じく、岡野江雪斎の旧蔵です。江雪斎が直接、徳川家康に献上したものでしょう。家康はこれを帯びて、関ヶ原・大坂の両役に出陣しました。寛永九年(一六三二)正月二十三日、二代将…

【刀剣紹介】上野郷

上野江 『享保名物帳』 焼失之部所載、郷義弘の刀です。宇都宮城主・本多上野介正純の旧蔵だったので、「上野江」とよびます。正純が元和八年(一六二二)十月、将軍秀忠の勘気をこうむり改易になったとき、闕所道具として幕府に没収され、将軍家蔵となりまし…

【刀剣紹介】黒田正宗

黒田正宗 『享保名物帳』焼失之部所載の短刀です。初め筑前福岡城主・黒田忠之入道宗英所持でした。ただし黒田家の家老所持という異説もあります。忠之がこれを駿河大納言忠長へ贈ると、忠長はさらに将軍家光に献上しました。家康へ献上という説は誤りです。…

【刀剣紹介】車屋藤四郎

車屋藤四郎 『享保名物帳』焼失之部所載の短刀です。謡曲『車屋本』の編集者・車屋道悦の一族である車屋宗瑞旧蔵でした。のち筑後久留米城主・有馬家の所蔵となりました。有馬忠頼の遺物として、明暦元年(一六五五)七月、正宗の刀と吉光の脇差を将軍に献上し…

【刀剣紹介】北野行平

北野行平 『享保名物帳』焼失之部所載の太刀、豊後国行平の作です。異名の「北野」は、もと京の北野天満宮の籠め物だったからかどうか、不明といいます。これの押形で『本阿弥光徳刀絵図』『本阿弥光柴押形』『長谷川忠右衛門押形』などに載っているのは、焼…

【刀剣紹介】岐阜国吉

岐阜国吉 『享保名物帳』焼失之部所載の名物、粟田口国吉の短刀です。初め浅野長政が所持していて、本阿弥光徳が五百貫の折紙をつけました。それを関白秀次に献上、秀次はそれを豊臣秀吉に贈りました。秀吉はそれを岐阜城主で、信長の嫡孫にあたる織田秀信に…

【刀剣紹介】北野藤四郎

北野藤四郎 『享保名物帳』追加之部所載の名物、京の粟田口吉光作の短刀です。これはもと京都の北野天満宮の籠め物だったので、北野藤四郎と名づけられました。もと織田信長の所蔵で、天正八年(一五八〇)二月二十二日、堺の津田宗及が京都に行ったとき、拝見…

【刀剣紹介】紀伊国片桐正宗

紀伊国片桐正宗 『享保名物帳』焼失の部に収載された相州正宗作の短刀です。単に紀伊正宗・片桐正宗ともいいます。紀州和歌山城主・浅野長政の家臣所持でした。それを長政が召しあげ、埋忠寿斎に金具を作らせ、徳川家康に献上しました。家康はそれを大坂方の…

【刀剣紹介】上部・桑山当麻

上部・桑山当麻 『享保名物帳』所載の短刀です。もと江州大津にあったものを、大和で二万六千三百八十石を領していた桑山伊賀守元晴が求めました。桑山家は嗣子・貞晴が寛永六年(一六二九)早世のため、封地を没収されたので、これも手放さざるを得なかったの…

【刀剣紹介】鉋切り長光

鉋切り長光 『享保名物帳』所載の太刀です。もとの持主・又五郎は江州堅田の住人とも、また堅田は姓ともいいます。又五郎が江州伊吹山の麓を、顔見知りの大工と連れ立って歩いていると、その大工がにわかに恐ろしい形相に変わり、又五郎に襲いかかろうとしま…