日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】陸奥新藤五

陸奥新藤五

享保名物帳』所載、相州の新藤五国光作の短刀です。もと会津城主・蒲生氏郷所持でした。それから子の秀行、孫の忠郷に伝わりました。忠郷はわずか十歳で藩主となり、老臣・森川半弥の輔導をうけていたので、これを半弥に与えました。忠郷が寛永四年(一六二七)正月四日、二十五歳で早世すると、嗣子がまだいなかったので、お家断絶となりました。家禄を失った半弥は、同族の森川勘解由の取り次ぎで、これを金沢藩主・前田利常に、金百枚で売りました。

将軍綱吉が元禄十五年(一七〇二)四月二十六日、前田邸に臨んだ時、藩主・綱紀は、備前長光の太刀、郷義弘の刀とともに、これを将軍に献上しました。宝永四年(一七〇七)七月十八日、将軍家宣の次男・家千代の七夜の祝いに、家宣はこれを与えました。しかし、家千代は同年九月二十八日、幼死したので、これは再び将軍のもとに戻りました。以後、将軍家に伝来、金二百枚の折紙付きです。昭和八年、国宝に指定されました。戦後、徳川家を出て、青山孝吉氏蔵です。

刃長八寸四分五厘(約二五・六センチ)、平造り、真の棟。地鉄は小板目肌よく詰まり、大肌をまじえ、地沸えつき、映り現れる。刃文は焼き出し細く、上は直刃に小足・ほつれまじる。鋩子は小丸、返りは深い。中心はうぶ、目釘孔一個。「国光」と二字銘。

参考文献:日本刀大百科事典