【刀剣紹介】蜈蚣槍
蜈蚣槍
旗本の水野十郎左衛門家伝来の槍の異名です。濃州関の兼光作の大身槍です。十郎左衛門成之の弟・又八郎忠丘家の所伝によれば、幡随院長兵衛は水野家の風呂に入るときも、刀を浴室に持ちこみ、床に敷いてあった酒弧の下にかくしました。
それをのぞき見した若党の軍平は、これは何かたくらんでいる、と早合点して、浴室に飛びこみ、長兵衛に斬りつけました。十郎左衛門は大久保彦左衛門と酒をくみ交していたが、その物音に驚き、蜈蚣槍を抱えて庭にまわり、板囲い越しに浴槽を突き刺しました。長兵衛の死体は酒旗に包んで、下人に捨てさせました。その因縁で、水野忠丘家では後世まで、酒弧を門内に持ちこむことを禁じていたといいます。
参考文献:日本刀大百科事典