日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】美濃屋正宗

美濃屋正宗

紀州徳川家伝来、無銘相州正宗極め、刃長一尺六分(約三二・一センチ)、平造り、地鉄よく詰まり、大肌まじる。刃文は小沸えつき、匂い深く、砂流しかかり、金筋も入る。

もと伊予西条城主・松平頼淳の長女、鑑姫所持でした。鑑姫は寛政(一七八九)年中、丹波の園部城主・小出英に興入れした人であるが、これがどうして紀州徳川家に伝来したのか、同家にも記録がなく不明です。昭和八年、同家の売立に出品され、百八十八円で落札されました。 刀号の美濃屋は、京都小川町の商人・美濃屋のことでしょう。同家の息・小四郎は、足利将軍義輝の弟・鹿苑寺周局の近習でした。永禄八年(一五六五)五月十九日、将軍義輝を殺した松永久秀は、平田和泉守を派遣して、周局を殺させました。小四郎は十六歳の少年だったが、怒って和泉守を斬り、身も自殺して果てました。その小四郎の差料でなくても、美濃屋から出たもの、と解釈していいでしょう。

参考文献:日本刀大百科事典