日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】松浦信国

松浦信国

享保名物帳』追記の部所載、尾州徳川家蔵です。これの説明に、「足を上り竜とも云、脇差の由、光律被申」とあります。これは本阿弥長根が、元文二年(一七三七)没の本阿弥光律の記録を見て書いたものです。光律は『享保名物帳』編集当時、生存していた人で、これが脇差であることを知っていたわけです。すると、追記の部に刃長を二尺一寸九分(約六六・四センチ)、としているのとは合わないことになります。

ところが、同じ追記の部に、光律がいう「上り竜」と同名の信国があります。所蔵者も同じく「尾州殿」となっているから、同一物の重複と考えられます。しかし、二尺一寸九分の松浦信国を磨り上げ、一尺九寸(約五六・七センチ)の上り竜信国にしたものでないことは、銘や彫物の位置から見て、明らかであります。すると、二尺一寸九分の刃長が誤記か、それとも両者は別物か、ということになるが、おそらく前者でしょう。

参考文献:日本刀大百科事典