日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】豊後来国次

豊後来国次

享保名物帳』追記之部所載、来国次作の短刀です。豊臣秀吉から豊後の大友に下さる、というから、大友宗麟天正十四年(一五八六)四月、大坂にのぼり秀吉に援助を乞うた時、秀吉は脇差を与えています。それがこの来国次のはずです。徳川家康が文禄(一五九二)のころ、金二十枚で召し上げたといいます。宗麟の嫡子・義統は、文禄の役において退却の罪を問われ、二年(一五九三)六月、所領を没収、安芸に流されました。それで、これを売りに出したのを、家康が買い取ったのでしょう。

家康はこれを将軍秀忠に譲りました。秀忠は関ヶ原合戦の後、伏見においてこれを、加州金沢城主・前田利長に与えました。利長の跡を継いだ異母弟の利常は、それを老中・本多正純に贈りました。正純が元和八年(一六二二)、将軍の勘気にふれ、出羽の由利に追放となり、この短刀も消息不明となりました。

参考文献:日本刀大百科事典