日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】鳩丸

鳩丸

1.短刀

粟田口国綱の作です。初め花山院家の家士・岡野内匠介健則が、慶長十八年(一六一三)、徳川家康から拝領しました。元和六年(一六二〇) 六月、将軍秀忠の娘・東福門院が、後水尾天皇に入内したので、その守り刀として健則より献上しました。寛永九年(一六三二)、賀子内親王誕生ののち、岡野家へお下げ渡しになりました。寛永十一年(一六三四)、石川丈山が、「一握之刀 攘天禦敵 維斯霊鳩 神祖所錫」、という銘文を綴ってくれました。細川幽斎も、「これで此かまくら山のうち刀 世にたぐひなきこしやきばかな」、と一首を添えてくれました。

健則の子孫・岡野新太郎則淳が、寛政五年(一七九三)に死去すると、嗣子がなかったので、則淳の異腹弟で、大坂において刀屋を営んでいる岡野新次 一郎が、岡野家伝来の鳩丸・藤丸など、二十一品を継承しました。享和四年(一八〇四)八月、京都の竹屋太兵衛にたのみ、研ぎ直しました。文化二年(一八〇五)三月二十五日、松平定信の命により、菩提所の白雲和尚が、森川曽吾の案内で見にきました。その結果、鳩丸のほか藤丸・楠正成の短刀・赤松円心筆八幡の小旗などが、『集古十種』に収載されることになりました。

鳩丸は刃長八寸八分(約二六・七センチ)、刃文は直刃で、腰刃を焼く。中心は目釘孔一個、銘は「藤六左近 国綱」。縁頭・目貫・鎺は金無垢で鳩の彫物。鍔・鞘は鉄鋳色の革包みで、燧袋つく。

2.太刀

尾張の岩田則亮作の鍔に、表「八幡太郎鳩丸御太刀鍔写」、裏「則売作」と切った鉄鍔があります。縦二寸一分(約六・三センチ)、木瓜形で、上部が鳩の頭の形になっています。鳩丸の太刀は文献にないが、幕末にはそういうものがあったことになる。

参考文献:日本刀大百科事典