【刀剣紹介】上り下り竜正宗
上り下り竜正宗
『享保名物帳』焼失の部所載、相州正宗の短刀です。上り竜下り竜正宗・のぼり竜正宗・のぼる竜正宗ともいいます。もと織田信長の蔵刀で、堺の津田宗及は天正八年(一五八〇)二月二十二日、信長の面前でこれを拝見しています。のち豊臣秀吉が入手し、大坂城の一之箱に入れてあありました。そのころ本阿弥光徳は押形をとっています。大坂落城のさい焼けたが、引き続き徳川将軍家に伝来されました。
刃長八寸四分(約二五・四五センチ)、八寸(約二四・二センチ)とあるのは、明かな誤写です。表裏とも幅広の刀樋を、中心先まで掻き通し、その中に、差し表には剣巻き竜、裏には下り竜が三銘柄の剣の切先をつかんた姿を浮き彫りにする。刃文は直刃、鋩子は小丸で、やや長く返る。中心はうぶ、目釘孔は瓢箪形、銘は「正宗」と二字、樋にかかり半分は消える。
参考文献:日本刀大百科事典