日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】永井正宗

永井正宗

相州正宗の作です。永井善左衛門道存はもと徳川譜代の臣だったが、小田原征伐のあと、蒲生家や上杉家に仕えたのち、浪人して武州深谷にいました。友人の京都所司代板倉勝重は、徳川家康が上洛した機会に引き合わせ、帰参させようと計画し、道存を呼びました。上洛の途中、道連れになった浪人に荷物を預け、道存は名古屋の親戚回りをしました。そして、その晩、夜舟に乗るので、熱田の舟着き場でおち合う約束にしてありました。ところが、その浪人は、道存が預けておいた刀を、銹刀とすりかえ、逃亡してしまいました。

勝重は家康が着京する前に、道存に手柄をたてさせようと思い、試し斬りの宰領を申しつけました。試される罪人のなかに一人、不死身のものがいて、用意された刀で斬ってみるが、切れませんでした。道存がすり替えられた銹刀を、少し研がせてみたところ、これは尋常の刀ではない、といいます。その刀で不死身のものを試してみたところ、見事に切れました。これはただ物ではない、というので、中心の銹を落としてみると、「正宗」という銘がでてきました。本阿弥家に見せたところ、正真という鑑定でした。それで家康に献上し、「永井正宗」という名物になりました。

参考文献:日本刀大百科事典