【刀剣紹介】天井刳り正宗
天井刳り正宗
筑前国上座郡三奈木、現在の福岡県甘木市美奈木の領主・黒田元男爵家伝来、相州正宗作刀の異名です。この黒田家は、福岡城主・黒田家の首席家老で、三奈木において一万六千二百余石を知行していました。
本刀は刃長二尺三寸(約八一・八センチ)、身幅広く大切先で、表裏に樋をかく。大板目肌のまじる地肌に、五の目乱れをやき、鋩子は焼き崩れる。中心は磨り上げ無銘。差し表に「寛永七年三月二十一日二胴落 切手浦上十郎兵衛」、裏に「寛永九年三胴落 切手中川左平太 黒田美作守所持之」、中心の棟に「天井グリ」と金象嵌入る。
切手の浦上十郎兵衛は福岡藩士、中川左平太は千二百石取りの旗本で、試刀家として有名です。黒田美作守とは三奈木の領主です。江戸中期になって、当時の美作守はこれを本阿弥太郎左衛門に研ぎ直させました。その時の添状に、「相模国正宗と相見申候。代金五百枚相究可申候」とあるから、この時はじめて相州正宗との鑑定になったようです。さらに名物の若狭正宗にも劣らぬ出来、と褒め上げています。
「天井グリ」という異名の由来については、判然としないが、ある時、これを大上段に振りかぶったところ、切先は天井に届いていないにもかかわらず、天井板に刳った孔があいた、という伝説もあります。
参考文献:日本刀大百科事典