日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】三位来国次

三位来国次

差し裏に「三位」とある来国次の短刀です。徳川家康の差料という説は疑問であるが、将軍家の御物だったことは確かで、江戸城の「小ノ一ノ箱」に入れ てありました。寛永九年(一六二三)五十枚の折紙をつけました。その後、越前福井城主・松平忠昌(家康の孫)が、将軍から拝領し、さらに次男・昌勝(越前松岡城主)に譲ったのであろう、寛文二年(一六六二)、本阿弥家から折紙をもらっています。その時、千貫の折紙を出したのであろう、『光山押形』所載の押形に、「千貫」と注記してあります。その後の経緯は不明であるが、因州鳥取城主・池田家に伝来しました。さらにその分家に伝来していたものを、明治二十年ごろ福地桜痴が入手、その後、荻昌吉を経て、米田虎雄男爵の有に帰しました。

刃長九寸一分(約二七・六センチ)、平造り、差し表は腰樋のなかに素剣の浮き彫り、裏も腰樋のなかに宝珠と火炎。しかし、『名物扣』や『光山押形』には、表裏に梵字、下に蓮花と注記してあるから、米田男爵家蔵のものとは別物の疑いがある。しかし、銘は両方とも差し表に「来国次」、裏に「三位」とある。三位は注文主の位階である。米田家蔵のものには徳川家康所用と伝えられる合い口拵えがついていた。目貫と笄には葵紋入り、柄はうるみの塗り鮫で、表の中筋には鎬があった。鞘は黒塗りで、鐺のほうには漆塗りで鍬形を表してあった。

参考文献:日本刀大百科事典