日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】京極正宗

京極正宗

讃州丸亀城主・京極家伝来の短刀です。同家中興の祖・若狭守高次は豊臣秀吉の側室・松丸の兄で、この正宗も秀吉より拝領といいます。しかし秀吉の形見として高次に贈られた樋口正宗と、おそらく同一物でしょう。樋口はヒノクチとよむのが正しいです。泉州堺のヒノクチ屋という商人です。徳川将軍家では明暦三年(一六五七)の江戸城炎上で、多数の名刀を失ったため、諸侯の名刀を召し上げる方針でした。京極家ではそれを避けるため、本刀はないことにしてありました。享保十七年(一七三二)、同家の宝物を将軍吉宗の上覧に供えたときも、名物「にっかり青江」は出したが、本刀は見せませんでした。

ようやく大正八年四月二十七日、華族会館において公開しました。その後、皇室に献上し、いま宮内庁保管となっています。

刃長七寸六分(約三・三センチ)、刃区がないまでに研ぎ減っているが、板目肌に地沸えつき、地景・ 地符を交じえる。刃文は直刃調の浅い五の目乱れで、金筋・稲妻かかる。鋩子小丸、尖り心に返る。中心は振り袖形となり、「正宗」と二字銘。名物「不動正宗」とともに、在銘正宗の標本。

参考文献:日本刀大百科事典