日本刀の世界 ~日本の様式美~

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【刀剣紹介】菊池槍

菊池槍

肥後の延寿鍛治が作った片刃の槍です。菊池千本槍ともいいます。多くの士卒に持たせたからです。その起原については、『肥後国志』にいつの時代に作り始めたか、不明とあり、平野五岳の千本槍歌にも、「臣菊池某、此ノ槍ヲ造ル」とぼかしてあるが、明治になって肥後出身の愛刀家たちが、正平十四年(一三五九)筑後川合戦のさい、菊池武光またはその子武政が士卒に命じ、短刀を竹竿の先につけ、槍の代用にしたのが始まりとか、 建武二年(一三三五)竹下の戦において、菊池武重が士卒に命じたのが始まりとか、臆説を流したのが今日流布し ています。

なお、地元の菊池郡泗水町永に伝わる口碑では、菊池氏から千本の槍の鍛造を命じられた延寿鍛治が、鬼二匹をつかって、一夜に打ちあげたのが始まりです。延寿鍛治の屋敷跡にある鬼水という古井戸は、その鬼が掘ったもので、真赤にやけた鉄を飴細工のように、素手で槍の形につくり、鬼水の水で砕刃したといいます。いずれにしても、菊池槍の起原は不明、というのが真相です。

菊池槍の刃長には、六寸(約一八・二センチ)前後と、一尺(約三〇・三センチ)前後の二種ある。後者は「数取り」といって、隊長が所持し、その数で士卒の人数が分かるようになっていた。菊池槍の特徴として、

1.切先は横手のない鵜の首造りになる。

2.鎺もとには刀と同様、刃区・棟区をつける。

3.身幅が狭く、重ねが厚い。

4.中心は槍同様、長いが、幅は刀同様に広い。

5.反りは通りをよくするたち、強い内反りとなる。形状は菊池槍と同じでも、内反りになっていないものを、相良千本槍という。肥後国人吉で模造したものだからである。

そのほか、古刀では肥後の石貫派、筑前の金剛兵衛派、筑後の大石左派、薩摩の波平派、新刀では肥前の忠吉派、筑前信国派などに模造品がある。

参考文献:日本刀大百科事典