日本刀の世界 ~日本の様式美~

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【刀剣紹介】石灯籠切り虎徹

石灯籠切り虎徹

「石燈籠切」と試し銘の入った長曽祢虎徹の刀です。五千五百石の旗本・久貝因幡守が、注文しておいた一刀ができ上がり、虎徹が持参すると、当時の流行とはいえ無反りなので、因幡守が思わず、これで切れるかのう? と呟きました。では、切れ味をご覧に入れます、と庭木の枝を切ったところ、勢い余って、下にあった石灯籠の笠石までも切り落とした、といいます。虎徹と同時代の久貝因幡守といえば、享保四年(一七一九)十一月十四日、七十二歳没の正方入道意閑でなければなりません。

しかし、石灯籠切り虎徹には目釘孔が四つもあり、少なくとも二回は磨り上げられています。そして「石燈籠切」という試し銘を入れたのは、その位置からみて最後の磨り上げの際のはずです。それは錆色などからみて、江戸中期の磨り上げと思われます。したがって石灯籠を切ったのは虎徹ではありません。貝因幡守としても、正信の子・因幡守正順の公算が大きいです。なお、石灯籠は江戸の湯島天神のもの、とする異説もあります。

現在は磨り上げられて、二尺一寸二分(約六四・二センチ)余しかない。無反りで格好は悪いが、地鉄は小杢目肌美しく、刃文も小五の目乱れ、足入り、華やかである。銘は「長曽祢興里入道徹 石燈籠切」とある。

参考文献:日本刀大百科事典