日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】日置豊前安吉

日置豊前安吉

享保名物帳』所載の筑前の左安吉作の短刀です。備前岡山城主・池田光政の家老、日置豊前守忠俊所持でした。よって日置豊前安吉・豊前安吉ともいいます。日置家を出た理由は不明ですが、あるいは、池田家が寛永九年(一六三二)、岡山へ移封のとき、出費多端なため売却したものかも知れません。購入したのは加州金沢城主・前田利常でした。本阿弥長識の鞘書によれば、宝永四年(一七〇七)四月、綱紀は老臣・前田大炊孝資に与えた、というが、『享保名物帳』では、やはり藩主綱紀の名になっています。大炊家から再び献上したものでしょう。藩庁では献上用の拵えをつけ、いつでも献上できるようにしてありました。折紙は千貫とも、五十枚ともあります。

刃長九寸七分(約二九・四センチ)、ただし、前田家の記録では、九寸七分五厘(約二九・五センチ)。反りは僅か。平造り、真の棟。差し表に護摩箸、裏に棒樋とするは誤り。逆に表に腰樋、裏は護摩箸をかく。地鉄は板目肌で、刃文は小模様で不揃いの五の目乱れ。鋩子は尖り、深く返る。中心はうぶ、目釘孔一個。「安吉」と二字銘。 本刀は大正のころ前田家を出て、岩崎男爵家に入り、昭和十五年に国宝指定、戦後、重要文化財となる。

参考文献:日本刀大百科事典

写真:刀剣名物帳「日置豊前安吉」

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