日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】一柳安吉

一柳安吉

享保名物帳』所載、筑前の左安吉作の脇差です。もと一柳直盛所持していました。直盛は勢州神戸城主から、寛永十三年(一六三六)六月、伊予の西条城主に移され、西条に赴く途中、同年八月十九日、大坂において客死(その人が普段の生活を送っている場所から離れている際に亡くなること)しました。享年七十三歳でした。本刀は直盛の形見として、次男・美作守直家に与えられたとみえ、同年(一六三六)、本阿弥家にやり千貫の折紙をつけさせました。その後、加州金沢藩主・前田家が譲り受けたとされ、寛文二年(一六六二)、本阿弥家に来たので、六十枚の折紙をつけました。その後、百枚に上がったので、『享保名物帳』にも、百枚とあります。前田家では江戸の藩邸に保管していました。文化九年(一八一二)三月には、本阿弥長根がお手入れをしています。 昭和十四年、旧国宝に認定されましたが、戦後、同家を出たのち、現在は重要文化財に指定されています。

刃長は『享保名物帳』に、一尺六分 (約三二・一センチ)とありますが、前田家の記録的には、一尺五分半(約三二・〇セ ンチ)とあり、現在は一尺一分(約三〇・六センチ)しかありません。 平造りに棒樋に連れ樋をかく。真の棟。地鉄は小板目肌詰まり、地沸えつく。刃文は匂い出来の五の目乱れ。釯子は乱れ込んで角張り、わずかに返る。中心はうぶ、目釘孔二個、鑢目は筋違い。「左安吉」と三字銘。

参考文献:日本刀大百科事典

写真:刀剣名物帳「一柳安吉」

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