日本刀の世界 ~日本の様式美~

日本の伝統文化である日本刀の刀工・刀鍛冶、名刀、刀剣書籍など

【刀剣紹介】岡本正宗

日本の美、日本刀

まだ腰に刀を差していた時代、日本刀は自分の身を守るためだけではなく拵えの装いや粋な刀装具を周囲に見せ、その刀を差す武士の品格を表していました。また、現代のように自身を彩るものは多くなく、腰に差す刀剣でその人のお洒落さをも表していたといいます。そんな千差万別ある日本刀を紹介していきます。

岡本正宗

享保名物帳』所載の短刀です。もと堺の町人・岡本道意が所蔵していました。本刀を前田利常が買いあげ、徳川家康に献上しました。のち本刀を黒田長政が秀忠から拝領した、と『名物帳』にあるのは誤りで、長政の嫡子・忠之が元服祝いとして慶長十一年(一六〇六)十二月十八日に、家康より長光の太刀・真壺とともに拝領したものです。

翌年、埋忠寿斎に拵えの金具製作を依頼し、十二月二十一日に完成しました。そのときとった押形が『埋忠銘鑑』に載っています。しかし忠之は道具より対人間関係を重視して、つねに子息たちに「他人より望まれれば、岡本正宗でも日光一文字でも惜しまず贈れ。ただし他人の道具は軽い物でも望むな。欲しければ千金出しても買え。買えなければあきらめよ」と教訓にしていました。忠之の嫡子・光之のとき本阿弥にみせ、はじめて折紙をつけました。光之の嗣子・綱政が元禄十五年(一七〇二)に再び本阿弥家に見せると、五百枚に上がりました。戦後、同家を出ました。

刃長は八寸六分(約二六・一センチ)ですが九寸六分(約二九・一センチ)とする異説もあるが、それは誤記である。平造り、地鉄は大板目、地沸えつく。刃文は五の目風の大乱れ、飛び焼きや砂流しなど賑やか。中心は目釘孔二個。無銘。

参考文献日本刀大百科事典

写真:刀剣名物帳「岡本正宗」

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